新春放談クロニクル 2005



  

     わたしも56歳になりましたので「来た」今、2015年にアップした物を読み返します。
     本文は基本そのまま。発言者の明らかな言い間違いは2か所修正しました。
     最新のテンプレートで色分けしましたので、わたしのチャチャが邪魔な人は
     茶色の部分だけをお読みください。
     2021年の追記は巻末にまとめて書きました。






2005

40周年の締めくくりは、85,95,とやりましたので、2005をお送りします。
10年おきの定点観測。大瀧さんは、ついに記憶も怪しくなって、
笑い声も「フフスーフフスー」って微笑が多くなりました。

『ムーン』は今年の40thと比較しながら再度聴き返すことになりました。
達郎が『ソングス』40thとともに振り返ったナイアガラ、福生
スタジオ、笛吹銅次についても、再度考察します。

詠:55を越えるとやっぱり来るね、50代になった実感が
50の声を聞いた、50になったっていうけど49と大して違わないじゃない
まんなかを過ぎるとね

わたし今来たと感じてることは56で実感するんでしょうか。

達:来るとどうなるんですか
詠:今年強調しようとしてるのは「間」だね
鶴瓶師匠と20年ぶりに話をした

鶴瓶 日曜日のそれ(04.6.27)古賀派、服部派の話ですけど。
大瀧さんの話に、ぐうの音も出ない的に納得する沈黙の「間」がよいです。
あんた、なんで僕のそんなことまで見通してるんや…的な。これ、
現在TBS「Aスタジオ」の構成コンセプトにつながってるんじゃないか。

○「間」の文化が復活するんじゃないか
達:彼は毎日しゃべってる仕事だから、20年ぶりにあった僕とか
の時はまったりしたいんじゃないかな 本来の地ですもんね
詠:これが56なんだよ、若いうちはわかんないんだよ
達:こっちだって52なんだから
詠:若い!

わたしもまだですね。先は長いです。

達:30年前に会った時からこのテンポでしゃべってるし、大瀧
さんがまったりしてきたなって思ったことは30年で一度もない
そうなりたい願望なんじゃないか

いえ、テンポは同じですが音数とエコーが増えました。それが
この3週間で分かります。

○数年前の苔・・・
詠:始まったものは継続します、終わることはない、テンションは違うけど

苔の生すま〜で

詠:30thはこれから、ついにレッツオンドアゲン、達郎フロム
ナイアガラも2009年に
3年で12枚、シングルじゃないよアルバムだよ
達:どうして非常識な契約を

10年周期で、達郎のブレなさは、同じ質問をあえて問うこと
でもあります。

詠:16chが欲しかった
最初は借りてたSCIの斉藤さん
録りをアンペックス、再生をスチューダー(ソニー)
助川、シュガーベイブのマスターの箱に名前が
山下君と助川君はずいぶん息が合ってた
達:神戸のフォーシーズンズマニアのマスターに会いに行った
日も直前までいっしょにいた
詠:2歳になったばかりの息子と遊んでてくれた
スマイリー小原のマナマナが大好きだった
サッチモが途中に出てくるのが

ボビー・ダーリン「Mack the knife」と「三文ソング」の間には
ルイアームストロングとスマイリー小原とGH助川がいた、と。
マナマナの件は初耳のような気がします。

詠:オートチューンで直してないから
95年にリミックス
何にも面白くなかった、同じになる
オリジナルな雰囲気を超えない
達:ハイファイにしちゃうと良くない

というわけで、今回(15)発表させられた'95リミックスについて
語られてますよ。
バック・トラックだけ05年に発表され、ヴォーカル入りは今年
出さされました。

○三文ソング 
詠:与太郎コーラスをフィーチャリングして出して
おります
あの演技力は芝居心がないとできない
達:勝手にしろ

95リミックスの成果はこれでしたか。

詠:キャラメルママで最初録った シティーっぽい
達:解像度は増してるがテイストは変わらない
笛吹銅次がやってるから

この辺については06年で語ってますね。

達:編曲作曲ミキサーまでやったら歌うには不利
詠:ホーンが吹きやすいキーを選んでる 歌に合ってない
達:ニューオリンズとかラテンとかはっぴいえんどでやってない
違うフィールドのをやりたかったの?
詠:はっぴいえんどが続いてたらこうなってたんじゃない

大瀧さん自身が、ほとんど楽器を演奏しないで編曲をし、
現場で4リズムを完成させる。
明らかに細野さんや茂さんや、その他の人と違うんです。
作品を実演しない、実体のない集団になって行ったんでしょうか。

詠:カセットの片方で収まる長さ 最近思ったこうあるべきだ
74分入るから入れなきゃいけないは貧乏な根性じゃない
でしょうか
あんまり長いのはお耳のおじゃまですという文化を取り戻したい

アルバムの長さ、曲数に必然性を感じるものはもはやない
ですね。
『フォーユー』が30曲録って10曲に絞る、とかです。

詠:デジタルマスターだけしかない作品は無い
CD第1号の人間がアナログと共に死す
アナログに捧げた人生 CD第1号に選ばれた皮肉

「Something Stupid」もアナログがあるんでしょうか。

詠:アナログの音を出そうとしてがんばってるよね君
達:語るも涙 無理ですよ アンペもハモンドも何も作って
ないから
詠:よかったなあ早めにやめといて

『ソノリテ』も難産だったんですね。
アナログ感を聴かせたいからライヴをやり続けるんで
しょうね。

○寒牛男のデモ モノ 
詠:片チャンに入れて次のダビング
を考えてた
自慢じゃないけど1回しか歌わなかった
早くミックスしたいから
だんだん歌ってると音が上がって
歌は埋まってる感覚しない
歌が低いって言われたって俺には聞こえてたって
無くても聞こえんだから
達:吉田さん リズム録りから100%やらせると歌が低くなる
歌詞わかってくるから
詠:最後だけ使うのがいいんだね
聞いた?タモヤン
達:声殺した爆笑

純カラを聴いて、各自で、歌を聴かせる。我が内なる
「大滝詠一の声」を。

○布谷「夏バテ」ポリドール

笛吹銅次の仕事がもう2件ありました。73.9.21発売だった!
はちみつぱい(74)もありますよ。

詠:ロックは輸入されたという本家分家意識 何でも向こうの
方が上だというムードがあったんだけど
まったく知らないうちに ただマネをしたんじゃなくて
オリジナリティーってところ
一生懸命じゃなくて余裕が感じられる いい演奏だし興奮
もしたし
スタジオ内の会話も入ってるけど和気あいあいとほんとに
楽しそうにやってるし

感性と技巧が研ぎ澄まされてるのに、張り詰めたような殺気
がないんです。
密室なのに空間に解放感があって、人間関係の距離感にも
「間」がある。
これは大瀧さんが意図的にしたことと、お子さんが住んでたり、
家族的な雰囲気の福生スタジオがそういう場だったんでしょうね。

○キングトーンズ
詠:あなたのプッシュで ルイード観に行こうって
シャネルズ出てるんじゃない 75年か もう呆けて来てんな
達:キャラメルで1枚作るって企画で 74年です それで
ダウンタウン書いた
内田さんにこの時代だからスタイリスティックスやりましょうよ
あんまりやりたくないんだって
持ってたらあの企画なくなったんだよって

プレゼンしたのは彼らコンビだけだって。結果3曲とも再製
しました。
愛着があったんですね。

詠:それが没になってから白い港のブルースのようなの書いてよ

暗い港のブルース(71)?白い朝のブルース(73)?

詠:老いては子に従えで 言われたとおりにやっとくもんなんだよ
やっつけでもいいからやっといたらカルトアルバムになったんだよ

『Doo-Wop! STATION』(81)も一つの落としどころでしたが。
「Can’t Give You anything」もどっかで聴いたような気がします。

詠:キングトーンズがハニーラヴやってたから これです
あーあれねって感じで
フォーシーズンズのヴィージェイ盤。中2の僕のマナマナの
ような宝物だった
あれとロイオービソンのミーンウーマンブルースとブルーバイ
ユーのカップリングと

「ジニジニバ」はけっきょく達郎がキングトーンズをおすすめ
したから出てきた、とも言えますね。
時系列では「ダウンタウン」の後なんですね。

達:未発表曲とかは?
詠:あとで発表してしまった物 クリネックスティシュー
夜明け前の浜辺
達:時間がないからCMこれで行くって、よく憶えてますよ
詠:使い回しはナイアガラのお家芸
こっちよりはトライアングル向きだった。結果論では
お先にどうぞ サイダー74の路線になってしまうわけです
達:かなりの確信犯
95年のムーヴィー用音源は95年に購入していただいた方
へのボーナス

今年(15)のレココレでは「楽しい夜更し」の「双六福笑い」
ヴァージョンは、95年に歌った、とされてます。新春放談用
だったんでしょうか。今回(05)はかけませんでした。

○裏ジャケは見てのお楽しみ
詠:伝統に則ってなんとしてもやらせていただきます

フォト・バイ湯浅学
フォト・アシスタント gucci&chigusa

05年盤のクレジットは↑です。そして

サウンド・アドヴァイザー satchimo部長(chibi-chan)

↑のクレジットもありました。

達:直接関わっていた仕事なので記憶が甦ってまいりました

2週目

○滝の音
「大滝さん、滝の音がないとだめだよ・・・いいよ、俺がこれから行ってくるから」

(talks about Niagara p90)
このエピソードは14年の7月にご紹介しました。

達:邦明と助川と3人
白糸の滝だから
詠:ちょっとばれちゃったけどね
達:入れるんですよ奥の方まで
詠:ナイアガラじゃ入れないからね
自分が観光地に行っといて 客が多いな って
達:徹夜3日目の朝に行った
詠:なんで徹夜してたの
達:夜ミックス見て昼間ライヴしてた
詠:そうなんだ、すごい忙しい
冗談じゃないって言いながら ああしろこうしろって
ソニーのスタジオでソファーで横になってた

ミックスダウンは六本木か。福生から行った想像でした。
ゴールデンウィークだから混んでたんですね。

詠:今時ああいうイントロのアルバム作る奴いるかね
達:導入部のストリングスが不自然だなって思ったんですよ

有ると無いじゃぜんぜん違います。最初に針落としたのが81年の
夏なんで、『ロンバケ』とダブるリゾート・ムードと勘違いしてしまいました。

詠:絵心、芝居心があるじゃないのよ 山下君は大活躍ですよ
達:ポリリズムはブラスバンドのパーカッションの経験がすごく役立って

達郎が語るシリアポールや『カレンダー』の回想も聞きたいですね。

○グヤトーンのリズムボックス
詠:ツアーでもあれが鳴るとおおーっ!
達:おしまいに大瀧さんがスイッチ切るんです
詠:ハイドン的なものがある みんな芝居心がある

切る時にピンスポットを当てて欲しい。

○シャックリママさんモノ
詠:この演奏テクニックあらためて聴くとまたすごいなと思う

これも40thで初収録ですか。

達:奥さんがシャックリされてたの?
詠:びんぼう作った時におふくろに「お前に貧乏させた憶えはない」
と泣かれた
ジャイアント馬場に久米宏が大きいですね
こういうシャレの音楽は距離感持って聴かないとね
そこで山下君からまた同じような質問が出るとはさすがに日本
文化は根深いなと思わざるを得ませんな

奥さん、岩手だそうですね。糸井五郎氏との対談(76)で答えてました。

詠:あのころ銀次と二人で変な邦題を探してた
リトルリチャードの素敵なママさん

恋するいも虫くんは検索しても出てきませんね。

詠:バディーホリーはシャックリ唱法ってアメリカで言わないでね
言っときますけど俺が名付けたんだ
シャックリ唱法を素敵なママさんがあるから、シャックリママさん
という三題話。らくごのご、家族に乾杯、出たとこ勝負のような
ものですよ

「家族に乾杯」で奥さんの岩手の実家が出そうになったって…

詠:城田君が石油ショックの時の歌ですねって 時事的なもの
達:アルバム作ってる時からおっしゃってましたよ ハンド
クラッピングルンバも
詠:70年代のニューミュージックから時代性と関係なく個人史的
なものになって
りんご村からの集団就職、有楽町にデパートが出来たとかキー
ワードが入ってたのが流行歌だった
ノンフィクションなんですよ

そういえば松本隆の詞でこういうのあまりないような気がしました。

詠:日本のフォークをかけてる喫茶店のマスターにこのアルバムを
かけてください
一時期アミューズにいたナガオって奴がエレックの宣伝担当
こんな趣味の音楽はかけられないと断られた
趣味趣味ミュージックを作った

ゴーゴーナイアガラで「大瀧詠一の趣味の音楽だけをかけまくる」
と謳い文句になるのは第22回からです。

達:そういうところに過激に反応すると
詠:文化と戦ってた、闘う相手が文化だったから勝ち目がなかった。
最後はレッツオンドアゲンで討ち死にする。まさに三島さんのような
ここで終わってたらカルトの教祖になってただろう
達:充分なってますよ

87年を聞いて05年を聞くと、異次元のテーマ、形而上的な話が
多くなっています。

○30thボーナスは
詠:カラオケ、95年にリミックスしてたの
笛吹銅次のデビュー作 最初で最後の大傑作
何度やっても同じバランスになるんだよ
達:ちょうど10年前にパレードをリミックスしていただいた
詠:昔のアナログレコーディングの良さ 昔の4トラ
マルチトラックするにつれてね
哲学的にいうならば 選択肢が多くなったことによる混乱じゃ
ないかな
ロンバケ最初の3曲はステレオ2チャン
戦後の教育 子供たちに何でも好きなことをやりなさいと言った
ある種の失敗
これしかやることがないということをやってた方が幸せだったかも
しれない
君は何にでもなれるという幻想を強く与え過ぎた 僕のやりたい
ことが見つからない

我が子の進路という点では身につまされます。今。

達:直しがきかない、後から
最近は全部直してるから上手い
詠:我々世代までは安心して聴ける 直しの技術が入って以降の物
は聴いてない
ビングクロスビーがあれが自然の歌 あっちが本物 完璧な音程
とかいう間違えた概念に毒されて
よかった。もう僕は第一線にいなくて

ライヴじゃ口パクで、直したやつを流す、という手ですね。

○シュガーベイブのTVKの録画

シアター・ライヴのエンドロールに映ってたような。

詠:ハードも高かったけどテープも高かったのに取っておく概念がなかった
達:アメリカの映像のアーカイヴは異常ですね 
詠:子供の声の録音で1970何年の何日って出だしに必ず・・・
将来この日があるってことを想定してたんです
達:向こうは商業的価値に結びつけるから あとで売り物になる
んじゃないか
詠:日本は宵越しの銭は持たない 忘年会とか残すことは良くない
達:大瀧さんも残すの好きな人 みっともないことであるかの
ように言われるじゃない
そんなに自己愛が強いのか 時々言われますよ
詠:強いけどね
達:自分の作ったものが誰が管理してどこで四散するかわかんないから

遺族だとしても何やってもいいってわけじゃないでしょう。

詠:死ぬ瞬間に後悔するって予測がないから
ああよかったな、って思いたいだけ

死期が分かって後悔が始まる、なら納得できます。「急死」は残念です。

詠:歴史と切り離して自分の人生はないでしょ
今回の新潟の大地震の時でも神戸の時でも、家から一つだけ
持って出たというのは、みんな写真のアルバムって言う

04年中越地震は阪神淡路以来の被害だったようですね。
これは直接間接被害はなかったですが、06年能登、07年中越沖
には記憶があります。

詠:岸辺のアルバムもそう
各々の記憶として刻まれてるんだけど共有できるものはない
パソコンで消えていちばん真っ青になるのは写真フォルダ
残そうっていうのは本能的なもの
心の中にあると言われても何か具体的なものが一つないと
その安心感が生きて行く上で一番重要なポイントなんじゃないかな
55越えると来るんだよ 若い時はさほどでもないと思ってるんだね

PCを替えるたびにマイピクチャは焼いておいたはずですが、今
どこにあるのか。

○福生ストラット、モノ
達:歌はせいぜい入って3チャン
詠:アナログで1音ずつやってみた1回イーチタイムで
自然感が出るのか不自然なのか ありとあらゆることをやって
みて面白くなかったんだね
達:直せると分かって演奏するのと直せないからとは
詠:気合が違う 人数が多いと緊張感が出る
音がどうのとかよりも演奏を生かすには同業者の緊張関係が
必要
みんな上手いからすぐ終わるんだけど 長々2時間一人ずつの所
に行って世間話と
達:スペクターも同じ R&Rの4リズムになるとただの手慣れで
ハリウッドは譜面見てパッとこなしてるのをどれくらい根性
入れさせてやるか

人前に立つのが嫌いでライヴはやらない。なら、
一発録り方式でラジオ生放送ライヴってどうだったでしょうか。
2時間番組で、延々しゃべって結局最後に「陽気に行こうぜ〜
恋にしびれて」だけ演って終わる…

詠:最初の物っていつも燃えてるのよ
はっぴいえんどの最初、CMの最初、福生スタジオの最初、ソニー
スタジオの最初
最初はいつも良い
達:だんだん飽きてくる 人はそんなもんですよ
詠:明治から近代までの歌謡史とポップス史を研究するとみんな
誰でもそうなんだ
ホンダラ行進曲のあれに戻って84年に辞めたわけだよ
そういうものかと
あんまり永らえるのは良くないと思ったな

「84年のホンダラ行進曲の」って?

達:来週はいつもの感じに戻ります

3週目

1.19発売フォーエヴァーマイン/マイダスタッチ

こういうオープニングは考えてみりゃ珍しいです。



○ジミーハスケルSing A Song With The Beatles!
詠:ビートルズマニアでもそうそう ジミーハスケルバックにして歌ってんだから
いつかオンエアしましょうか抱きしめたい

宮永学長のブログにこの後の経緯が書かれてます。
http://b4univ.exblog.jp/24995689/

○ロックアラウンザクロック
詠:ビルヘイリーのアレンジはすごかったってことだね。イントロの
ショッキングな
必ずしもオリジナルだけがい良いというわけじゃない

別のアーティストによる後年のヴァージョンが、オリジナルを上回る評価を得た。
大瀧さんの作品でも、大瀧さんがカヴァーした作品にも、あまり例がないような。
あえて言うなら「デッキチェア」か。93年の「ハマラジ・スぺシャル」で語ってます。

達:アナログは最後の買い時
ジョーミークのラスト・ワークの一つ
詠:ギターがリッチーブラックモア 67年ぐらいのイギリスがブルース
に傾倒してるところを揶揄してる

ガイミッチェルのことを話してますが、あの曲だな、と思うんですが
「アメリカンポップス伝」、もう忘れてしまってます。

詠:ビートルズ以前に変なことをやってる いろんな人を輩出してる
これでは生きて行くのは難しかったろうな
『レッツ・オンド・アゲン』作った身で言うのもなんだけど彼の気持ちはよくわかる
達:大瀧さんは作ってそのまま平常心が残ってる
狂気の人だったんだけど僕は狂気を演じ損なった平凡な人間で
宇宙から帰還した非常にただのノーマルなどうだってことない
人間だってのを『ロンバケ』で証明したんでしょうな

『ロンバケ』を大成功の頂点と捉えずに、別世界からノーマルへの社会復帰だと。

達:30年は早かったですか、長かったですか?
詠:睡眠について考える
たいてい何時間ですか?って聞くじゃない
ホテルでは何時間寝ても寝た気しない うちに帰ると4時間でもすごく寝た気がする
あれは深度、深さだと思う
どうも人間のほんとのところを動かしたり決めたりしてんのは深さだな
今まで計られてるのは何万枚売れました、何%取りましたとか
30年間てのも横の概念なんだよ
本当のところ人間の感じてるのはその深さ
深さは曰く言い難しなわけ 55越えたら来るよってのは深さの話
これが言いづらいんだ、縦軸は言いづらい、横は語れるけど 敵は縦に在りだね

冒頭で「音数が増えてエコーが多く」って書きましたがこのことです。
厚みと深み、です。

詠:まあ同じことしか言ってないけどね30年前と
達:そう思って聞いてるんだけど
詠:ありがたいよ、聞いてくれるのは君だけだからさ
なるほどねって聞いてくれる人も少ないんだよ 話する相手が
いないんだよ、だいいち

深く理解できる聞き手を仕込んで来た30年です。

達:大瀧さん寝ないでいつも15分で返信する
詠:オートリプライシステム
この人がこういうのを書いて来たら判読して・・・ほんとなわけないでしょ
返事はその時に書かないと書きたくなくなる
即答しないものは一生出さない 一生出さなくてもいいかなというのは書かない
CMも受けたのは話を聞く前に出来てたか、持って来た人が合致
した、ぎりぎり言われたときに浮かんだもの
それ以外は断る
話が来る前にこう言うだろうと作って置く
名人は先に在る 昔あったことを今語れる 今語ったように
語れる技術 今語ったように思わせる技術

24時間体制でメールに返信できる、と思わせる技術。
なんの名人だ、ってことですけど。

詠:君のアルバムはどうなってんの
達:ソングスが出るあたりに出そうかな
だいたい出来てるそろそろ仕上げに 先にシングル書かなきゃいけないから
詠:書けるうちは花だよ もうできないんだって、56になったら分かる
から、人間55を越えないと
達:ボブディランが引退宣言 60なんぼでしょ 充分でしょ
昔は50代になったらそんなこと大衆は望まなかった
25と40いくつのシンガーを比べてこの人は最近作品が落っ
こって来た おかしいよね
詠:バカなこと言ってるよね 声高になるよ 横軸でしか考えてない奴ら
達:ブライアンの今度のスマイルをね、声出てない、当たり前だろ61になって

達っつぁん、全国ツアーできるあなたはすごい。
もう新曲を発売日に買ってないけど、ライヴは毎回行きたいと思う。

詠:当時聴いてる人以外は聴いちゃダメ。君は今を生きてるんだ
から今の物を聴きなさい 
でなければ、当時聴いてた人と同じ感覚で聴きなさい、持てるもんなら持ってみろ
それはリアルタイムのものなんだすべてにおいて

今年(15)年末の歌の祭典的なやつ、いっさい見てません。
なんでだろ、嫁も娘も見てないからでしょうか。

達:下手に音が残ってるから論評できちゃうんでしょ
詠:川本さんがフタバジュウザブロウさんのあれで
ヴィデオの時代になったので小津の再評価があるんじゃないか
って小林さんが書いておられましたけど
フィルスペクターがとか、ってオイ

思い当たる節があったりする、わたし。

詠:スペクターの海外のサイトじゃ君はかなり有名、僕もレジェンダ
リープロデューサーよ
夢で逢えたらどうやったら買えるのか。日本から丁寧なレスポンスが

海外のサイトの掲示板
http://www.spectropop.com/archive/index.htm
1999年の#313〜353 とりあえずここまでたどりつきました。

詠:裁判中ってこともあるけど新作作れって誰も言わないし、そう
いうところが真の理解者だと
いつまで長嶋に打席立たすんだって、何回出汁とったのよ長嶋さんから

04年はアテネ五輪で監督やらそうとしてさせられなかった件がありました。

詠:需要と供給とかじゃなくって溢れて出来てたんだ、ビートルズ
とかいっぱい出てる人はそういう意味だったんだよ

契約ノルマじゃなくてね。
ラジオのゴーゴーナイアガラは大瀧さん自身から溢れ出たものじゃないでしょうか。
初期の放送を聞いてみてそう思います。

達:レコード買ってますか?
詠:ベルトケンプフェルト
やっぱりドイツだなって思う
カレ(華麗)すぎるなと昔思ったけど
達:カレ(枯れ)てきたんですね

↑こう取ったんですけど。

詠:イージーリスニングだと思ってっけど変な曲だよ
一種のヒーリングミュージック
インストって3曲聞くと飽きるね エレキインストは聴ける 世代的なもんかね
達:シャンペン・ミュージック、BGMだから刺激しちゃいけない、ダンスミュージック
だから延々鳴ってればいつまでも抱きしめてられる

詠:詳しいね。君はどっちかっていうとそういう音楽が得意だから

『ロングタイム・フェイヴァリッツ』では発揮できたかな。

○スペクター・ジャックニッチェ・テリーメルチャー
達:ハイファイじゃないしダイナミックレンジじゃないし音の感情?
詠:ヴィニール育ちじゃないかって気がしてきた
シェリーの向こうのヴィージェイ盤とフィリップス盤の日本の
カッティングを調べてみると10db違うんだよ
今のデジタルでレヴェル上げたのと違う
数値でやってない 真空管がどこまでもつか、煙吹いてもいい
から切っちゃえとかいうような
再発のCDはどうもしょぼい
あれはマスターテープの音、オリジナルの
10db上がったマスキングされたヴィニール盤の音なんだよ我々が言ってるのは
この音はどんなエフェクター使っても出ないんだよ
達:歪み感がやっぱりガッツっていうか
詠:最近のエンジニアはアナログのリミッターとかコンプレッサー
とかを使い始めたが、こうはならないんだ
達:ヴィニールの溝を引っかく歪み感
詠:アナログは接触なのよ、シャンペン・ミュージックじゃないけど
デジタルは非接触なのよ
接触は自然、非接触は都市化
アナログは針で接触してるしテープ面もヘッドに接触してるから
接触してる温かさなんだよ
さて、非接触の技術の中にどうやって接触感を出して行くか
今回のナイアガラムーン・マスタリングのわたしのテーマ

大きな目標ですね。
この重要なポイントを憶えてなかったですし、そこを聴いてなかったです。

達:30年前大瀧さん家でシングルの外盤初めて聴かせて
もらってね、一番印象に残ったのはMr.ブルー
日本盤のフリートウッズとぜんぜん艶が違うんだもん
大瀧さんが「だからこれヒットしたんだ」って

すごい授業ですよ。薫陶を受けるってことでしょうか。

達:とりあえず、ここ2,3年は新春放談面白いな
これからいろんなネタも出てくるし

わたしも聞き返しの復習が楽しいです。







ご承知の通り、今年は『ロンバケ』を散々聴いてます。
聴いているあいだ何度か40年前の光景や空気の匂いが
フラッシュ・バックしました。
『ムーン』は『ロンバケ』のあとCBSソニー盤を手にしたのですが
やはり最初に聴いた頃の背景がしっかり甦ります。

次に浮かぶ風景は福生です。
2014年3.14の初めての聖地探訪へディスクマンで持って行きました。
まだスマホじゃなかった・・・
これは意図的に記憶に焼き付けるために音をセレクトしたのです。

「『ロンバケ』はステレオ2チャン・・・」と、
マルチ24チャンを否定的にとらえたところ
これも今回、情報更新
2チャン一発で行こうと数曲録って、最初の3曲が目標どおり
出来た。4曲目が「白い港」だったり未発表曲があったり
「カレン」「シベリア」「FUN4」も方法論は同じでステレオ2チャンが
土台になって、などの詳細なデータが明らかになりました。

今は完全に映画モードなので
「川本さんがフタバジュウザブロウさんのあれで・・・」のところ
この前に「桃中軒雲右衛門は今の人は分からない・・・」
という達郎さんの言葉があったんです。
この時点で双葉十三郎すら調べてないのでなんちゃらクモエモン
もスルーしていました。
今は雲右衛門が明治末期の浪花節の大スターで成瀬監督が
映画化したタイトルである事も分かりました。



05年は成瀬巳喜男生誕100年で、現在の再評価のきっかけに
なる年です。04年末の収録の時点では大瀧さんも観ていない物が
まだあったんではないでしょうか。

「芝居心がある…」構成の『ムーン』ですが
BOOK END形式は音楽では、とくにコンセプト・アルバムには
多いですが、『ロンバケ』も前奏曲、後奏曲的にバック・ステージの
背景音にブックエンドされていますね。あと、
「シベリア」のつけ足し方、『トラ1』での「ナイアガラ音頭」の
付け足し方、です。
川島雄三の映画的な。逆に川島が音楽的なんでしょうか。

「喜劇 とんかつ一代」のエンディング・テーマ





2021年7月 DVD発表

ウララカ−インマイルーム