2002年
1週目
詠:変わんないね、君も
達:僕48です、今度の2月で49になります
詠:えーいよいよ。老いてますます
今年は53だから54になるんです
もう違わないね。あの頃から年上のような気がしてたけど
達:初めて行ったのが二十歳です、大瀧さんは25でした
詠:もっと年の差あったような気がしたね
達:20代はありますよ
アフガニスタンの平均年齢が46歳なんですって
ウサマビンラディンなんか壮年なんです
世紀末が少しずれ込んで2001.9.11に世界の終わりを迎える
大きな不安に襲われました。
詠:だいたい日本が変なんだ
達:すごいですね日本の長寿って
みんな元気で
うちの母親の50の時を思い出す
自分がもうすぐ50になると思うと変な感じ
実はお孫さん産まれるのは意外と若いんですね
おじいちゃんおばあちゃんと言われるの歳になるのは早い
詠:君の方が早そうだね
達:お嬢さんとうちの娘といくつ違うと思うんですか
詠:順番で行かないんだもん
なんでも俺が一番早いと思ってたけど、結局そうじゃない、
世の中って面白いねえ
細野さん、もうおじいちゃん、一昨年だ
もともとおじいさんみたいな人だったからね
細野さん不老不死の相が出て来ました。54で孫できたんか。
今年は大瀧さん、生誕70年です。
2002年は54歳、同い歳になってみて、その年の発言を噛み締めて
みたいと思います。

達:大瀧さんなんて、著者近影無し
見て、腰抜かしました。これでいいんだ!
詠:すでにこの世にいないんだもん
作家がみんなやってて、いんだろミュージシャンも、聞いて
みるもんだね
あいかわらずミュージシャンは「さん、君」付けない、呼び捨て
なのよ、新聞の決まりなんだって
前にさくらももこさんと仕事した時、「さくらももこ氏」なんだよ、
「が、大瀧詠一の、」なんだよ。オイ!
かと言って、呼び捨てにされたからって、氏の付く方になりたい
って思うのも情けない
達:呼ばれりゃ呼ばれたで、俺そんな呼ばれ方されたくない、
呼ばれなきゃ呼ばれないで、何でそんな…
詠:あなたほどへそ曲がりじゃない
達:人のことは言わないでほしいな
歳が近接して来てるなあ、会話の
ゴーゴーナイアガラの復刻
達:伊藤銀次と僕と大瀧さんと3人で虫の鳴く秋の夜長を…
詠:だいたい世界中、虫の声が入ってる放送っていくらなんでも
アフガニスタンでも無いと思うよ
見事にずーっと入ってる(笑)
達:耐笑
達:自分でやりたいと始めたの、今の復刻
詠:新しいのをやってくれって言われたんだけど断った
そして春に旅いって岩手の洞窟の温泉に行って、上から水滴が
額にピッと落ちた時
「これだ」と、再放送でよければやってもいいぞ
夢をもう一度とか嫌いなんだよ
同じ事を二度やるのが嫌い、前のあのようにとか嫌
その割には同じ事ばっかりやってるんだけれども(笑)
違う事をやろうと始めるんだけど結果おなじになるんだよな
ベルウッドのファーストの原盤のマスターすら廃棄されてるのに、
ラジオのマスターを残しておくという概念も無い、日本初ですよ
たまたまなんだ、リミッターをかけた音を録りたかったんでソニー
のカセットテレコに録ったのを使ってた
達:1番最初がキャロルキングでした。それから順を追って行く
んだと思いきや、いきなり
詠:山下さんがやる時はそうするんだと思う
昨今はランダムになって来た
順列がどうでもよくなって来ました
達:さんざん順序だててやったからもう
ピカソ、キュビズムですね、青の時代が終わったのか
スピーチバルーン
詠:前々から対談番組みたいなのを企画してた
青田昇さんに野球の話を聞きたい
上岡龍太郎さんと話をしたいとか
レギュラーでやる継続的な考えはなかった
達:昔のスピーチバルーンは今の大瀧さんからは信じられない
ような多彩なゲストが
あの当時の人選は誰が決めてた、この人いい、あの人は
あんまりとか、そういう意思は
詠:僕でしょ
忙しかったから編集権は任せてた
あのね。ゴーゴーナイアガラすごい番組だと思うわけ
あれ毎週やりながらアルバム11枚も作ったんだぜ
達:暇だったらやれません、だから出来たんです
詠:今回2本同時にやってるのもそういう意味
ただぜんぶ録って出し、土曜日の放送の搬入が金曜日、日曜日
のはギリギリ木曜日
あの3年間もレギュラー持つって本当に1週間早いんだよ
君よくやってるよ、エライ
達:だってやりたくてやったんでしょ
詠:あなたやりたくてやってないの
達:やりたくてやってますよ
一週も欠かさず3年?
詠:2回目、マスター搬入し損なって
放送しなかったキャロルキングのバージョン残ってる、2曲
ちょっと違ってる
あの時代によくあんだけレコードあったな
達:今だから全部CDになってっから何の苦もなく
資料もペラ1枚でどこまで正しいか、朝妻さんが書いて
詠:少年の頃は聖歌隊に入って…
本当なの?
「みんな日曜日は教会行くんだ、たいてい聖歌隊はいって
るよ」だって
詠:今はずいぶん簡単に手に入るよな
達:あの時代は合ってる、あれ違ってるって、
詠:ふざけんじゃないって言うんだよ
それと同じようにビデオ見て細かくどうのこうの言う奴と
話したくない
達:映画館いったって一回しか観られなかった
ここは後に耽溺する監督術の分析は含まないんですね。
詠:音楽って体験するもんだし、車の中で聴く時は浴びる
もんだと考えてる
車で一緒にデカくかけて大声で歌うとか
どこでもいいから乗せてください!
達:期せずして2001年に復活
復活のやり方が大瀧さんらしい
普通だったらNHKとか
詠:あのね、NHKももういい
まるでNHK向きなんですよ
達:第1でやって全くおかしくないプログラム
詠:ああいう所でやると専門家が聞いてる
来るんだよ
「あなたも研究なさるんならちゃんと調べて」って言われる
とさー
ああいう事やると「本だすんですか?」「自説を主張したい
んですか?」
俺はさ自分の趣味なんだよ
できるなら人前で言いたくない
達:なかなか世の中にそれが通用しない
詠:みんなに話すじゃない
みんな乗ってくれるじゃない
中には「あんたそれ
一人でお墓に持ってくのか
世の中には聞きたい人もいる
みんなに聞かせてやってよ」
上岡さんに言われた
達:行動様式ではそうやってもおかしくないやり方なんだ
けど、大瀧さん自身はそうじゃない
それ説明したって分かんないですよ、25年も一緒に
いるから、そんなもんだ当然だなと思うけど
さらに進展すると、専門家に研究発表しに行く。
仮説が結論であるかどうかの証明。
詠:自分のスタジオで機材買い込んで
財産はたいてFM東海のターンテーブルを
お皿まわしてマスターテープ編集して送り込む
達:人を介在したくないのは自分の趣味にしたいから
詠:編集は自分でやった方が上手い
音楽でも本当は聴いていたかったわけよ
やらなくて済むようになったからやらないんだけどそれが
本来の姿
エルトンジョンがこれからはステージやらないとか、
ビリージョエルが子供と一緒にチャートでがんばるのは
疲れた、って俺に言わせりゃ今頃かい
達:とっくにやってるって、ショーガネーな−
気持ちは分かるけど、みんなやれっこないよ
みんな言ってみたいんですよ
人に「そんな事いわずにいやあなたはまだまだ」
って言って欲しいんでしょ
詠:俺は言っとくけどさ、ほんとにやらないんだ
達:ニャハハハハ
達:今回のスピーチバルーンのラインナップはどうして
詠:小林旭をやり始めた時に、あの人は一人歌謡史だ
ったんだ
明治の演歌から戦前戦後のある種の歌謡、船村、遠藤、
星野の今演歌の大御所と言われてる人たちの一番初期の頃
に模索しながら一緒に、ツイストとかカヴァーも映画音楽もある
なんせ僕がびっくりしたのはコロムビアの後半に浜庫さん
が出て来るわけ
恋の山手線だけじゃなく他にもたくさんトライしてる
船村さんだってなんでダイナマイトが百五十屯
R&Rを、あれは日本語のロックなんだよ
他にロカビリーやウエスタンとかいろんな人がやってるにも
かかわらず、小林旭でそれを実現してたけど評価されなかった
達:小林旭をやる、やるって話でしたが、いつ頃から計画してた
んですか
詠:一昨年の新春放談をコロムビアの人が聞いて「やって
いただけませんか」
実は熱き心にの時に声掛けたけど、ああいう古い体質の所は
乗りが悪いんだよ
新譜よりも旧譜なんて、今やリイシューの方が利益率が高い
んだよ
当時コロムビアとの関係は拙かったんじゃないでしょうか。
ナイアガラの原盤いっさい引き上げて出てっちゃってるし。
詠:もう2年間毎日アキラ聴いてたよ
聴けば分かる、って言ってしまえばもうこれで終わりだから
船村、遠藤、星野のちょうど面白い時期だったのよ
そこをやると戦後の歌謡史も全部語れるし、ものすごく広くなる
なと思ったらやたらに広くなった。収集つかない
達:大瀧さんずっと普動説から始まって歌謡史をやってきたけど
どちらかって言うとポピュラー系の作家を語ることが多かったけど
詠:ドメスティックなラインを
達:どんどんそこに没入して
詠:やらざるを得なかった
面白かったねーほんっとに面白かった
達:ちょっと待って、まだ行く前に
小林旭さんのカタログを何をどういう形でどうなさるんですか
詠:全部聴いた、全曲。自分でセレクトして
一つは民謡。宍戸錠さんが旭さんを最初に聴いた時、「これは
都会の民謡か」と
旭さんは東京の人だから、裕次郎さんは北海道で、不思議なね
達:あべこべに見えますね
日本のモダニズムと言われてる物が実は非常に地方色があると
詠:深く行くとその辺まで行くんだけど
2枚目がポップス。アキラでツイスト、アキラでボサノバ、恋の
チュンガ、さいはての慕情、黒い傷あとのブルースとか洋楽の
カヴァーとね
童謡をアキラ節にしてる
スペクターのクリスマスと同じ
コロムビアだから島倉さんとかも童謡を出してるけど
旭さんのは自分のヒットソングのスタイルでやってる、これが面白い
池田憲一さんと対談した時聞いて
3枚目がスクリーンテーマ
さすらい、女を忘れろ、ダイナマイト、ヒット曲
4枚目がクラウンでコミックソングだけ
自動車ショー歌からね
面白かったのはね、コロムビアのマスターテープ、編集が異常に
多い。マスターにぜんぶ白が入ってる
1959年60年に編集のテクニックがすでに日本でもあった
達:どういう編集なんですか、行き方を変えるとか
詠:あの頃はカラオケの場合はヘッドフォンじゃない、スピーカー
なんだよ
スピーカーから漏れて来る音を位置とボリュームとで合わせて
やってる
だから間奏がかぶってるからぼやけてる
で、間奏だけカラオケ使ってる
達:あーなるほど、そう言われるとありますね
音源は全部ちゃんとしてた
詠:してたね、スコッチテープで
さすがにそういう所はちゃんとしてるなと
歌のまん中にも白いっぱい入ってた、これは驚いた
今のようにヴォーカルのセレクトはやってる
達:ここの所は1回目の方が良い、とか
詠:それはアメリカのテクニックですでにあったんだけど、日本じゃ
テープにハサミを入れるとは、なんて言ってた、はっぴいえんどの
頃に聞いたような気がする
けど、初期の頃は普通にダイナミックにやってたんだよ
達:本当に考古学ですね
詠:旭さんは途中までモノじゃない
アキラでツイストのツルー(true)ステレオがあった
達:入れるんですか
詠:入れますよー。今度の売りだから
達:ライナーはご自分で
詠:書かない、歌詞カードのみ、せいぜいデータ
キネ旬から本が出る予定
そこで解説を書く
だってさ、アキラの歌は理屈はいらないんだよ
東京ビートルズとかトニー谷には説明が必要だったと思うけど
小林旭に説明はいらん、余計だよ
ね、同じようでいてちょっと違ってるでしょ?どうよ、どう?


達:スピーチバルーンはそういうラインナップで始まったけど今後は
どうなんですか
詠:えーと、野球
達:ふーん、んふんふンフンフ(笑)
詠:次はTV
達:完全に南方熊楠じゃないけど、めちゃくちゃ広くなって
来ましたね
詠:元々ナイアガラはエリアが無いという事でしたから、ナイアガラ
音頭を聴いていただければ分かると思う
達:それで忙しい忙しいって
詠:今年は久々に忙しかったね
レギュラーってのは嫌だね
達:人に束縛されるのが嫌なんです。時間を束縛される
詠:時間を支配したいんだろうね
やりながら感じてるわけ
編集が一番楽しい、黒澤さんじゃないけど
結果なんかどうでもいい、出なくてもいいわけだから
なぜか、ギリギリその日には間に合う、今のところ幸運にも
達:昔、マイケルジャクソン出世太閤記
本番始まってるのに結末のテープがまだ届かない
詠:いや、放送してる間に15分ずつ編集して出してる、最後が
時間かかって大変、次の番組のアタマ入っちゃった
達:ギャアハハハハ
詠:いつもそうなんだけど、何分以内の放送とか作りたくないのよ
作ってみたら何分になった
不思議にだいたい1時間になる
前の日本ポップス伝も、用意してきて相手と喋って終わってみると
ちょうど90分なんだ
だけどたまにね、100分に10分長くなって、いいじゃない大した
違いじゃないよ、何光年とかに比べりゃさ
達:桂文楽さんは「よかちょろ」100回やっても2分と違わない
詠:君はそっちの、punctualな人
60分に収めないといけない時は体内時計が合わせる事の
出来る人
達:人間が真面目なんです
詠:やっぱり都会っ子だから
僕は18歳までは非常にのんびりした場所で育ったから
体内時計が天空に近いんでしょうな
達:タイとか行くとね、今日やるはずのライヴの機材が来ない
今日はやめ、明日やる、そんなの日常茶飯事
詠:タイに行こう。タイ米も美味しいし、タイは美人が多いじゃない
2週目
船山さん、遠藤さん2002年で70歳だったんですね。
達:大瀧さんって意外と聞き上手ですよね
詠:なんだよ意外とって
達:だって僕ほとんど大瀧さんにもの聞かれたことないもん
詠:だってこの番組って俺ゲストなんだろ
ゲストで来てゲストが聞いたんじゃ
十なん年やってると
ときどき君はどうなの?って言うと
いやいやあなたがゲストなんですから・・・いつもそうやってさ
達:気を使ってるんですよ、錚々たる諸先輩に
詠:諸先輩って俺っきゃ来ないじゃないか、君の女房と
家内制手工業じゃないか君の所は
達:でも大瀧さんが船村先生に聞いてるのっていいな
お侍さんがらっきょで一杯飲ってる感じが
詠:どういう例えなんだ

人情紙風船でしょう。
詠:これで異常に分別あるんですよ
分別ありすぎて音楽に向かない
芸術は無分別です
達:大瀧さんはmatureなのか
anarchyなのかわかんないところがある
詠:君の過大評価だよ、何にも無いんだよ
達:何にも無い、っていうのがまた在るんです
ほとんど禅問答になってますけど
詠:みんなが過大評価するほどは無い
ある方面には、天才が百だとすると、20パーセントくらい
2割打者じゃ、3割打たなきゃベストテン入んないよ
達:今回は圧倒的に長嶋監督に対しての大瀧さんのコメントを
ぜひ聞きたいという方がたくさんいらっしゃいます
詠:へ、長嶋さんどしたの?
達:引退した事の
詠:引退って、もう何度も引退してるよあの人
見てないんだよ、日本の野球
去年はイチローの試合は全部見たよ、
もうとっくにメジャーにシフトして、もう戻って来ないんじゃない
かな
変わり身早いからね
達:やっぱりポテンシャルが大きい方にどんどん流れて行く
詠:元々そういう奴だよ
たいていシフトすると3年、前一年、後一年、ね
イチローは自分の中でだよ、自分史でこれ以上熱を入れる事は
もうないんじゃないかなって気がする
「ある方面」が四方八方じゃないですか、大瀧さん。各20%、
2割打者だとご謙遜されても8方向あれば160%です。
そして大瀧さんが「野球」方向に送る、達郎さんが見事に受けて
進める。ここ達人技。名人芸です。
達:こないだキャロルキングの特集をやって
詠:なんでまたキャロルキング、嫌いでしょ、あんまり好きだ
って感じは伝わって来ないな
バリーマン派なんだから君は
達:昔から大瀧さんはキャロルキングだキャロルキングだ、
僕はバリーマンだバリーマンだっつって
詠:対抗ではないんだけど
達:キャロルキングのビートルズ以前のガールグループや
アイドル物のカタログなんて僕の10代の頃はほとんど絶版だった
アウト・オヴ・プリント、聴こうったってラジオでもかかんないし
僕、78年に知り合いに日本盤のシングルを1000枚ぐらい
貸してもらって
ボビーヴィー、ジーンマクダニエルとかようやくキャロル
キングのあの時代のヒット曲が実際に聴けるようになった
だってクッキーズの音源自体が無かったでしょ
詠:無いよ、俺のゴーゴーナイアガラでかけたのが日本初
じゃないかな
達:でしょ?。ですよ、ヒーズアレベルは大瀧さんの家に
行って聴くしかヒーズアレベルは無かった
特にアイドル歌謡はひどくて
詠:君の場合はキャロルキングはユーヴガッタフレンドの人
とか、そういう感じ?
達:ナチュラルウーマン、あとモンキーズですよ
詠:ひどいね
達:フォーシーズンズがウィルユーラヴミートゥモローを68年に
カヴァーしてるでしょ
詠:肌合いが合うから、カヴァーでもね
達:ユーヴロストザットラヴィンフィーリングはあってもジャストワンス
インマイライフなんて絶対ラジオで聴けなかった
誰も知らないですよ、キング・ゴフィンなんて僕らの世代は
だって聴く機会まったく無いですもん
詠:ジェネレーション、5歳ちがうとデカイんだよね
達:銀次はまだちょっと知ってるんです
詠:アイムイントゥサムシングッドの人だから
達:アイムイントゥサムシングッド、アールジーンなんて聴いたこともないし
詠:あんなもん、あれこそ世の中に無いよ、初めてかけたよ、
ゴーゴーナイアガラ
達:サムクックのワンダフルワールドとかがまだちょっとかかってるかな
みたいな
ほんとにあのガールグループって抹殺されてたじゃないですか
詠:だから65,6年のベトナム反戦から音楽も混迷に向かった頃に
産湯を使ってるんだよね
達:実はゴールデン・エイジ・オヴ・ポップには、何にも
詠:なんだよね
けっこう60年代中期はああいうのは唾棄すべき物と
達:そんなの聴いてんのか?とか
詠:そうそう
だってそれがど真ん中なんだもん
だからキャロルキングで1曲って何?って
ロコモーションだよ
後にも先にも私の場合、ロコモーション。自慢じゃないけど
達:それは買ったんですよね
詠:買いましたよ
ひーざぼーい、っていうのがB面なんだよ、なんだこの変な歌、B面、
手え抜くんだよーいつもー
達:ロコモーションは日本ですごく売れてたんですね
詠:流行ってたよ、超大ヒット
達:それがキャロルキングだという事を
詠:レコード買った時にゴフィン・キングと、たぶん最初だと思うよ
達:大瀧さん、作家みて興味ある人を
詠:エルヴィスで作家別にやったら音の系譜が全部分かったから
達:予備講義があったんですね
詠:必ずシングル盤の後ろを見て
おんなじ作家のクレジット見て出版社始めたのは朝妻さんだからね
達:けっきょく収束する原点はおんなじなんですね
固有名詞が多い回は毎度大変ですが、お陰様で今回はついて
行けました。
いまだにボビーヴィーやスティーヴローレンスは持ってませんけど
買っときたいですね。
それで、初めて聴いたのがちょうど78年ぐらいなんです
で、そしたら大瀧さんがロンバケ出したんです
詠:あ、そうなの
達:カレンダーが78年じゃないですか
79年の終わりでしょ
ロンバケ1曲、2曲、3曲目聴いて、大瀧さんってほんとにキャロルキング
好きなんだなって
あん時はじめて分かった

時系列、細部間違ってますが、まあいいでしょう。
カレンダーで燃え尽きて、次の本命的な物は「移籍後」という展望は
あったと。ラジ関ゴーゴーナイアガラの終盤の特集は「移籍で成功」した
アーティストの転向/展開の検証でした。
詠:ゴーゴーナイアガラって一番最初アルドン
ようするにアルドンなわけよ
総体的に全部好きなんだ
自分の中では真ん中がゴフィン・キング
右翼がマン・ウェイルで左翼がジェフ・エリー
君の場合たぶんマン・ウェイルが真ん中で
達:そうですね
詠:これが、日本の場合とクロスしたのを発見したのが僕の
普動説だった
ゴフィン・キングは唱歌
輸入した賛美歌とか。まだ百何年なんだよ
マン・ウェイルは歌謡
ジェフ・エリーは童謡・民謡
これは完全に分かれてるんじゃなくて円形になってる
達:ボールのどこ見るか

これはわたしなりの解釈なので定かかどうかわかりません。
詠:ロコモーションっていうのはキャロルキングの中でもジェフ・エリー
の方向なのよ
ドゥーワーディディー、ハンキーパンキーがジェフ・エリーじゃない。童謡、左派なの
童謡は単純化で民謡にクロスする。CFGじゃない
ドゥーワーディディーはCFGの中にマン・ウェイルのようなサビ持ってくる
あれの中に歌謡を入れるからデカくなるんだよ
で、マン・ウェイルの歌謡の所を突かないと日本ではドメスティックな
ヒットは出ない
唱歌から百何年たって中田章とか成田為三とか洒落たメジャーセヴン
だとか半音進行だとかが入ってきて戦後、高木東六、
服部さん、八大さんがやって来た
からキャロルキングのような唱歌的な物が真ん中に来るんだよ
それをよりポップに近づけて、マン・ウェイルの味を入れると、
丸まるマン・ウェイルだって言われっけど、カレンになるわけ
俺の中でのマン・ウェイルはカレンなんだよ
カレン好きの人が多いのは、日本は歌謡じゃないと大きなメインロードは
掴めないんだよ
達:大瀧さんがロコモーションから始まってずーっと来て、プロになって
やる時にバッファロースプリングフィールドになるわけじゃないですか
いきなりあそこでキャロルキングが再び出て来るじゃないですか
どう思いました?
詠:なんだ?と思ったよ。お化粧かえてさ、何してんのと
はぁんと思った。歌ってのは歌なんだ
つまりね、ロコモーションはダンスナンバーだ、ユーヴガッタフレンド
はシンガーソングライターだ
ンなことはどうでもいいんだ
なあんだ、歌は歌じゃないか
また、プロデューサーがあれでしょ
達:ルーアドラーです
詠:ジャンとディーンのプロデューサーがまた出て来て
ジャンとディーンからフラワーサウンドにコロッと衣替えしてんじゃん、
あの人
だからさ、同じ人間がいろんなタイプの曲を作っていいわけよ
あの人はロコモーションのような歌しか作っちゃいけない、とかはさ
船村さんがね
自分だってダイナマイトが百五十屯とかいろんな物を作ってたんだと
なんかやって行くうちに王将が出て
王将の船村、船村の王将ってなって
周りがみんな、ああいう曲じゃなきゃ、っていう感じになってきて
これがよく分かったんだよ
達:やっぱりパブリック・イメージとか成功がその人を縛る
詠:という事なんだろうな
もう一つは、成功して大勢の賛同を得ると同じ物を期待する
それは餌を待ってる小鳥のような物なんだよな
あれだけ鳴いてるんだから持ってってやらなきゃかわいそうじゃないか
次また似たような物を待ってる
欲しいって言ってんだから
食料を供給するんだから、大いなる愛情だ、大したもんだ
君はほんとに偉いと思うよ
子育ての資格が自分には無いんだ
途中で放棄したわけだから
これは非常に怒られる
達:よーく分かりますよ。大瀧さんは若い頃
「俺は出来レースは絶対やだ」を何十回となく見てますからね
カレンダーの2月と8月を待望された件でしょうか。つまり
突貫ロンバケ工事をコロムビアですることを固辞したのか。
達:でもねパッションが保てないんだったらやっちゃだめ
詠:その通りだね、おっしゃる通り
達:営業になっちゃう
僕はおんなじもの100回やっても、おんなじパッションだったら風化
しない。ジェームズブラウンですよ
もしそれが、いやー明日も同じだーってあれするようになると
詠:そういうのって出てるんじゃないの
いま継続してる人は、新たなパッションでやってる
同じ物を形骸化してるような感じで再演してるとすれば、だんだん
人は減ってくんじゃないかな
達:春日八郎さんが、何十周年記念の時におっしゃった
俺の歌はまだまだこんなもんじゃない
体力もあるけど精神力が無くなったら、本当にやっぱり出来ない
詠:そっちの方が大事だよね
達:気ですよね
詠:だから年齢的とか体力的には出来たんだけど、僕は気が無くなった
からね
やる気が無いからね
達:キャロルキング特集を自分で3週間やってみていちばん
面白かったのは
いかに大瀧さんはすごくキャロルキングを採って(盗って)る、特に
ロンバケ
そう思うぐらいキャロルキングをよく知ってるんだな
大瀧さんの世代でそれを聴いて分かる作家ってどうしていないのかな
後ろの方いくと例えばU2が、とかスプリングスティーンが命とか
聴くとたしかにスプリングスティーンぽいなっていう
そういう作家がスクリーンジェムズのレヴェルでは日本に誰もいない
詠:そこが僕の限界、それが分かるのが
達:ああなるほど
詠:日本の歌謡はもっと間口の広いもんなんだよ
キャロルキングみたいのもあったね、ああ、あれもあったねー
茫洋としてるものの方が大衆歌謡としては絶対的なもの
達:きっとそうなんですね
詠:あー勝てないなと思った
出処ある所をちゃんと「こうでござい」と正直に出してるんだけど
これが限界なんだよ
達:全くその通りです
詠:だろ?
達:オタクっていうかマニアっていうか
ここはアソシエーションみたいじゃなきゃ嫌だ、とか
これあそこでしょ?
あ、ハルブレイン!
こだわっちゃうじゃないですか
詠:バラが咲いたってさ、浜庫さん自分で歌いたかったんだって
売り込んだらマイク真木でレコーディングする事になったんだけど
発売やめてくれって言い出した
コードが違うって
〜いつまでーもの所
マイク真木のは行ってないんだよ
行くのが俺らのサウンドで、行かないのが日本のフォーク
俺よく分かるんだよ、浜庫さんの気持ち
達:ワーハーハーハー
詠:そこをこだわるから、ダメだったんだよ
達:絶対にそこはそうじゃなきゃだめなんですよね
詠:Cのまんまなんてやめてよ。ぜったい嫌じゃん
大衆の方々はどこが違うのって聞いてくる
達:よく言われます、うちのビジネスパートナーに
詠:メロディーだけ聴いたら違ってない
皆さんはメロディーしか聴いてないんだよ
メロディーだけでいいって言ってるんだから、いいんだよ
達:それじゃやってる意味ないでしょ
詠:だからやめたんだよ
達:僕はもうちょっと戦ってみたいと思います
詠:君は戦うよ。昔から戦ってたもの、出て来た時から勢いが
卒業式ボイコットした人だから
俺は戦わない、すぐやめたんだ
君にはがんばってもらわないと
君はマン・ウェイルが産湯なんだから
歌謡をやらねばならない申し子
俺はキャロルキングだから教条主義の啓蒙的なところがあって
けっきょくはもう浮草稼業だね
ある部分マン・ウェイルがちょっと水中の草のように
根がある程度かな
後はdrift and drifting 浮遊
達:歌を歌おうとは思わないんですか
詠:いやあ、要請ないもん
誰も言って来ないよ
達:言ったら断られるって思ってるから
詠:三島由紀夫は3回断る。美輪さんが言ってた
達:4回目に来る奴がいないからでしょ
三顧の礼っていう
それだけ大瀧さんはリビングレジェンドと化してるんです
詠:ビクターのステレオじゃないんだから
阪神星野監督の要請受諾か。
リヴィング・ステレオはこれでしょうか。

ほんとに要望がないよ
いや足りてんだよ。いっぱいいるじゃん。今の物は今の人が
歌ってりゃいいんだよ
達:だってアルドンスクリーンジェムズにちゃんと造詣があって
この曲を書いてんだなっていう作家がいないんですよ
詠:アルドンの三組を集めてキャロルキングを中心線として
パッピドゥビドゥワはジェフ・エリーだし
突然最後にジョーミークをちょっと足してみました、というポップス講座
だと。結果的になっちゃった
達:それはテクニックじゃ出来ないから、色とか気とか、そういうのは
何ていうの、産湯じゃないと出来ない
詠:自然にね
あんなもん一回でいいんだよ
一回でいいって何度も言ってきたけど、歳とってきたら、つくづくそう思う
スピーチバルーンで今
40年から45年ぐらい前の検証してるでしょ
自分が今30年でしょう
分かんないもんだね、当時って
40年経つとはっきり分かるねえ
船村さんのダイナマイトは自分でR&Rアプローチだと
あのね監獄ロックで歌えるんだよ
The warden threw a party in the county jail
カラスの野郎どいていな
達:じゃ明らかにそういう事で作ろうと思って作られた
詠:コロムビアで小坂一也にもそういうR&Rアプローチがあるらしい
何故かっつったら大御所が すでに定型の物を独占的に握ってたから
同じ事をやっても目立たなかった
星野さんも言ってた
だから何か変わった事やんなきゃ
達:歴史は繰り返す
詠:ダイナマイトは大成功だったけど
いらいらって出来損ないの歌だったんだ
達:ワーハーハーハー
それは自分で歌うからですよ
詠:いらいらとダイナマイトと違いで僕の才能の限界がはっきり
見えてるね
ダイナマイトだったら何とか行けるけど、日本の歌謡にはいらいらの
場所が無いんだよ
無いって分かったからびんぼうとか颱風で諧謔に逃げたんだと思う
達:こないだ遠藤実さんのヒストリーのTVを見て思ったんですけど、
僕はすごく大瀧さんと遠藤実さんと近いところがあると
詠:昔から言ってたよね
達:もし時代がああいう政治の季節じゃなくて、歌手か、作曲家か
どっちかでやんなきゃなんない時、かなり遠藤実さんと
詠:番組で遠藤さんがからたち日記を歌って
いろいろ身振り手振りで説明して
ぐーっと歌ったから
そこ聴かせ所ですよねって言ったら
んーん握手!握手しようって手のばされて
さすがに熱き心を作った人だけのことはある!
何度も言われたよ
遠藤:〜ほのかーああな
詠:あぁ下がる所が良いですね
遠藤:やっぱり本物だあんた!握手だ!
達:リヴィエラと熱き心にと
詠:そらそうだよ、だって
達:クリスマス音頭
詠:ん?
達:との、この落差を
同じぐらいのものを持ってる人は
遠藤さんしかいない
そらそうだよ、だって
の先が聞きたかった。作曲法でお手本にした部分の種明かしを。
詠:こまっちゃうな
達:ミニミニデート、とんぼのめがね
この間いちばんシビれたのは
ユキ子のロック。40何秒しかない
赤坂泰彦さんがすごく好きでかけてて
ミノルフォンの面白なんとか珍盤集がCD化してそれに入ってる
一体これが導入部なのか、40何秒で終わってるのか確認できない
これこれこれフジケンジ
詠:いかにも付けそうな芸名だな
植木さんの全国縦断追っかけのブルース
ジャーン!今なんずだとおもってんっだこのー!
これ遠藤さんなの
好きだよねえ
星野さんは当然自動車ショー歌の人だから
船村さんにしても遠藤さんにしても非常にユーモアセンスがお有りで
ミノルフォンはね、大変だったんよ
非常にナイアガラの末期によく似てる
達:ナイアガラーハーハーハー
詠:たくさんアーティストはいたんだけどほとんど売れなくて
達:もの凄い量でてます
詠:そういう意味合いではすごく遠藤さんに似てんだよ
あれはレッツオンドアゲンなんだ
ああでもやらないと自分の精神性が保てないのさ
それにしても本来的なユーモアの感覚がないとミニミニデートは
書けない
達:ミニミニデートのスポットが
これ突き抜けてるなんて生易しい物じゃなくて
意図してやってないでしょ、それが結果的に
詠:真面目に作ってる
達:エドウッドですよね
エドウッドなんて言っちゃいけない、かわいそうだ
達:いま聴いても突き抜け方が素直にね
詠:たくまざる結果のユーモア
布谷さんでやろうとした物も狭義な所で止まってしまった
達:大瀧さんは真面目に作ってたんですよ!でしょ?
詠:いや遠藤さんの真面目に比べれば、真面目さが足りない
自分を三人称化して逃げ場作ってるからだめ
やるからには山本譲二のようにふんどしイッチョでガーっと出て
さあやるゾーって嘘でもやらなきゃ
けど、さすがにそこまでは出来ないんダヨォォ
一龍斎貞鳳じゃないけど、どうも教養が邪魔しちゃうんだな
達:古い、古すぎるー
詠:古すぎたーショーちゃーん
お笑い3人組

スピーチバルーンでは後編で、ダンチョネ、ズンドコ、ソーラン、小原、
ツーレロ、ホイホイ他、遠藤実の補作曲のあんちゃん節を絶賛してます。
既存の民謡、大衆歌の翻案の技巧。
達:レコード聴いてます?
詠:聴いてるよ。ジョニーティロットソン
達:何で聴こうと思ったんですか
詠:番組に使った
草野さんにインタヴューしたの
もう草野さんに来ちゃってるわけ
兄弟リレー、昌一浩二
達:涙くんさよならって
詠:シンコーのローカルカヴァー国内制作第1号なんだって
達:今後の予定は
詠:チャコさんと酒井さん
コロムビアつながりだから
達:それも面白そうだな、そういうレヴェルのインタヴュー番組は
絶対聞くなあ
詠:また聞き手が良いもの、俺だよ、いっとくけど
達:話し上手聞き上手
詠:ここで聞いてもすぐはぐらかす
あぁああたがゲストじゃないですか!
達:それは諸先輩がた(笑)
詠:だから誰なんだ?がたって?諸先輩はいいけど、がたがいない
だろ、がたが?
女房は諸先輩じゃないだろうが、だいたい
達:話の行きがかり上
詠:月の家円鏡みたいな
前半のボケをかぶせてきました、達郎さん。
達:今年は小林旭さんをやって
スピーチバルーンは3月で
詠:末で終わり
ゴーゴーナイアガラも終わり
達:そーなんですか
詠:終わりだよ
こんなもんいつまでもやってらんないよ
アタマ切り替えろよ
達:2002年はリイシューは
詠:ああトライアングルvol2あ、忘れてた、すいません
達:じゃもう3月中にぜんぶ決着つけちゃうんだ
4月からは?
詠:旅
達:苔は?
詠:ちゃんと生えてるよ
いろんな物を採りに行ってるから各種そろってるよ、12種類
達:しかしついに再来年で20年
詠:20周年すごいよ、なんか貰おうよ
民放賞かなんか
東京都の県民栄誉賞ないの
太陽族、石原都知事でした。
達:4月から先は旅なんですね
どこに?国内でしょ
詠:そりゃ飛行機乗るの嫌だもの
でもね、シアトル行きたいんだよ
達:行けばいいじゃないですか
詠:ドーシヨーカナー(小声)
宮崎は行ったんだよ、長嶋さん観に
イチローと長嶋さんとじゃ命のかけ方が違うんだよな
アラスカ繋がってないの?陸で行ける?車で
達:オホーツク、アリューシャン列島上がって
冒険家ですね
詠:今年から冒険家にしたよ
けっこう冒険してるよ、音楽界では私
2001年の新作は新曲じゃなかったけど大作でした。やっぱり作品
として提出できたら、例によって機嫌が良いし舌も滑らかです。
頭切り替えろよ、には返す言葉もありません。
ウララカ−インマイルーム 
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