新春放談クロニクル番外編



  




大瀧詠一的 2008


10年前です。ライオンズは惜しかったですがリーグ優勝。
相撲はすったもんだ。財務省はグダグダでも政局は揺るがず、
です。


麻雀、楽しい夜更かし、雑俳
麻雀放浪記、
大瀧:己れのバイブルとしてそれに臨むのが無くなったそういう
フォーマットを持ってる青年がいた時代
内田:浅田彰 じゃねえや阿佐田哲也
大瀧:あさだが似てりゃ同じそれを違うって言われると話が出来ない
あが合ってりゃいいんじゃないか大差ないよ
内田:誰の事言ってるか分かるわけだから
時事放談、床屋政談
内田:どうでもいい話から始まって
その時間だけ取って突然プツっと終わってしまう
我々の今日に至る原型だよね
大瀧:今年はこれがあるけど新春放談が仕事初めで仕事納め
内田:今年何されてた
「野球小僧」
ライオンズ30周年
1958年から50年同じドラマ
西武球場ガラガラ九州場所と同じ
相撲、八百長、行司
大瀧:スポーツの概念やいろんな物に当てはめて分析しようとする
のが間違い
ああいうもんなんだ
退潮だなんとかって流行っていた時から見て言ってるだけ
明治の頃、廃止にされそうだった
調べもせずに調べようともせず、みんなすぐ乗る。すぐ言う麻生イズム
子供入れんなよ色んな奴いれるな
聞かせない話の方が面白い
不必要な物はお金取ってもいいけど
必要な物はパブリックドメインになるべき
自然はPD 太陽にお金払ってる奴いない
内田:「街場の教育論」教育をほっといて
大瀧:調べもしないで論じるな
麻生太郎イズム
漢字ちゃんとしろ
麻雀から始まって野球、相撲、もうネタ無いよ
平川:歩く昭和史みたいな人ですね
風俗、歴史

ずいぶん端折りました。ここからまだCSのくだりまででやっと半分
博識と見識の巨瀑に打たれましょう。


大瀧:知らない事ばっかり
毎日不明を恥じるばかり
内田:若水八重子の女中シリーズなんてどこでやってるんですか
CS
大瀧:野茂のファンになった所から話さなきゃいけない
小言幸兵衛だよね
野茂が近鉄に入った時
野球ファンとしてこの選手を生で見ておかないとダメだ
野茂対清原の対決を全試合観た
西武球場に通って、ドームも、名古屋、川崎も行ったけど
藤井寺球場が見られない
良いアイディア、衛星放送の
関西でチャネルオーってのがあってそこでやってる
そのためにアンテナ立てた
そしてチューナーを合法なのか非合法なのか色々やってたら
映画が飛び込んで来た
日活とか松竹映画がポーンと
これは良いと思って見始めた
今スカパーとか言う
映画会社のCS部が
試験放送だったけど今は有料
でも安いよひと月300円
みんな入ってよ
内田:入ってよって我々いつ見るんですか
大瀧:え?録画しとけばいいじゃない
内田:録画いつ見るんですか
大瀧:新幹線の中だよ
昔なんか1時間20分位だから2本ぐらい見れるぜあっという間に
内田:大瀧さん朝から見てるんですか
大瀧:だから録画だよ
平川:この間の成瀬のもCSですね
だって秋立ちぬは買えないもん
大瀧:おかあさんは出てるでしょ
平川:Boxには入ってないですよ
大瀧:新東宝だから、安く出てますよ
良いですよ、銀座化粧の次に撮った
スペインでも出てる、おかあさんのDVD
内田:スペインに成瀬ファンがいるってことですか
大瀧:インドはた田坂具隆が凄い、黒澤と並び称される
日本人誰も言わないのに



香川京子の渡る橋 


91年ぐらいから膨大なアーカイブ構築
大瀧:見るのに忙しい、大変だよ
系統立てて
決めて見ないと闇雲に数って捌けない
ジャンル分けって数を捌く手法なんだね
出て来る時に私はこのジャンルでござい
なんて出て来る奴はいない
本屋とかレコード屋とか大量の物を分ける時に
便宜的にやるもんだから定義はない
内田:大瀧さんがこの前、太陽族映画っていうの聞いて
太陽族映画なんてカテゴリーがあるなんて
大瀧:慎太郎が都知事になったから
禁止されたんだよね
映倫が前々からあったんだけど、これで厳しくなった
内田:いま大瀧さんが系列化して見てるのは
若水八重子なんてどういう系列なんですか
大瀧:どれがどれだかマルチチャンネルだから
一気に流れてるんだ、黄河のように
平川:成瀬は特集をずっとやったんですか
大瀧:成瀬はBSでもやりましたよ
成瀬巳喜男全作品
編成に良い人がいたのよ
松竹のサイレント作品も一挙放送してもらったの
平川:成瀬巳喜男の世界、世田谷美術館で展覧会
やってましたね生誕何年という
あの時セットを再現した
大瀧:作った中古智さんのお弟子さんの
竹中和雄さんという人に会いましたよ
話を聞いて
内田:いろんな所に出没してるなあ
大瀧:スピーチバルーンのムッシュのも実は
もう一本あった
それで思い出したんだけど
あそうか、放送しないスピーチバルーンを
最近個人でやって歩いてんのかな、と
面白いよ、放送するって前提がないからね
内田:それ録音してるんですか
大瀧:してません、もちろん。頭の中にあるだけ
秋立ちぬの助監督の石田かつむねさんにも
お会いしました
平川:それどういうあれで
大瀧:まあいろいろ蛇の道は蛇で
銀座4丁目の出口から乙羽信子と少年が出て来るでしょ
上がって来るとき新聞売りが座っていたのは憶えてないでしょ
あれが石田さんなんだ
平川:最もたくさん見てるかもしれませんね
大瀧:ぜんぜん最近だもん。量を追い求めたのは2007年3月から
内田:一日3本とか4本でしょう
大瀧:の時もある、見ない日もある。決めてない、サラリーマン
じゃないんだから
町山、映画の部分記憶
内田:映画の人や音楽の人は記憶装置が違う
平川:カメラアイなんだ
内田:大瀧さんだって音楽に関しては違うんじゃないかな
大瀧:真実は細部に宿るって言葉がある
全体とか包括的に量を語る人が知ってるかといえばそうじゃない
ツボというか肝を押さえるかどうか
本条さんが言ってた、三味線の
鳴る、響く所があるんだって
響く所を使ったほうが作曲でも、そこを、どこにいつ使うか
響かない所ばかり僕が言うから、こんな所使わない、弾いたこと無い
ああ河原の石川五右衛門
基本的に三味線は隠微なもんだね、猫だしね


ここまでがマクラです。

平川:小さな映画館なんかでやってるのを観に行ったり
大瀧:行きましたね。神保町シアターとか
平川:目黒にもあるし、三軒茶屋、最近ちょろちょろ
一時はピンク映画をやってたようなとこだよね
石川:我々のガキの頃は一つの町に映画館が一つあった時代
それしか娯楽って無かったからそれを観るしかなかった

大瀧:娯楽が増えたからそれが無くなったって本当に正しいんだろうか
あの頃はテレビが無かった
みんな常套句のように言うけど
内田:今の若い子たちって何やってるか。映画は見ないし
テレビも見ないし新聞読まないし
大瀧:まあ首相も読まないって言ってたし
平川:相当ありますね(笑)
大瀧:娯楽が少なかったからなんとかだったってなんか引っかかる
テレビが出来たのは後の事じゃん
テレビが出来る前の人はテレビがある前提のもとに動いてないし
ランプの時代は24時間電気がついてる事を想定してない、
その前はろうそくだったんだから
平川:でもテレビはそうとう劇的に変えた事は間違いない。その前は
大瀧:ラジオか映画ですよね
平川:ラジオはもちろん赤胴鈴之助、少年探偵団?
大瀧:漫画だね
平川:漫画は何読んでました?
大瀧:全誌、申し訳ない
よく怒られたんだけど、おふくろが小学校にいたんでツケがきいた
少年、少年画報、少年倶楽部、月刊。3年生の時に週刊サンデー
・マガジンが出て来た
少年は付録が良いんだ
内田:鉄腕アトムと鉄人28号
大瀧:少年探偵手帳を持ってた
内田:BDCバッジも
我々の世代の人はみんな持ってる
探検するとこあったもんね
防空壕も廃屋もあるし
壊れた洋館にホームレスみたいな人がいて
大瀧:ほら穴に住んでる人もいた
平川:街全体が遊園地だった
内田:日常生活のまわりにグレーゾーンがすぐ横に
大瀧:それを娯楽が無いって言い方で片ずけるのはいかがなものか
戦前の映画みるとみんな集まると歌とか芸をやる、自分がやるのよ
会社の集まりがあると何をやろうとか
NHKでも何年か前まで文士劇みたいな事を
よく歌ってたでしょ
内田:やってましたよ、宴会で
今まったく歌わない
大瀧:とにかく集りゃみんな歌う
それと股旅物やると必ず振りをする奴がいた
なぜにそれが娯楽の無い時代なんだよ
自分がプレイヤーであり演出家であり享受者であり
全部自分たちでやってるわけだからこんな安上がりなことないよ
内田:うちの父親も謹厳実直なサラリーマンだったけど
それでも一応宴会芸があって歌舞伎の声色
家に集まって、ちょっと課長もひとつ
そうかい?問われて名乗るもおこがましいがって
何回も聞いてるから憶えちゃう
大瀧:それをオハコと言った
石川:生まれてはみたけれどのお父さん
大瀧:持ち芸があった、手品をやったり
娯楽は種類としては以前のほうが多かった
娯楽が無い時代って逆じゃない
単一化された娯楽の事を言ってるのであって
平川:もうちょっと後になるとゲームの無かった時代って言うんだ
大瀧:みんな二言目にはなんとかが無かったって結果が
出てからもの言ってるような気がする
平川:遠足でのべつ幕なし歌うたってたでしょ
大瀧:バスの中で、颱風を歌ったら、そんな歌は無いって
言われたのは能地裕子
内田:甲南合気会で合宿にバス借り切って
旅の栞を作って歌が出るのかなと思うとクロスワード
平川:僕んとこの空手の合宿なんて老人多いからさ、ガンガン歌う
大瀧:どんな歌?どんな歌うたうの
平川:童謡ですね、何も歌えない奴は軍歌を
大瀧:戦中派は軍歌しか無かった
軍歌というより憶えてる歌って意味なんだよ
内田:あれは歌わされたってこと?
大瀧:いや、あのねえ、どうだったのかなあ
歌わされたのはお山の杉の子くらいなもんじゃないか
それしか流れてなかったっていう時期もあるっつってたけど
ちょっと難しいね
平川:パチンコ屋に行くと軍歌
大瀧:軍艦マーチは進駐軍の目の前にある有楽町の
パチンコ屋の人が腹いせにかけたんでしょ
GHQから見えるあすこのガード下からでかく流したという
内田:それから始まったんですか!
変ですよね。今はパチンコ屋でしか流れないんだもん
大瀧:なぜかね、パチンコと軍艦マーチが結びついて
瀬戸口藤吉もパチンコのテーマソングに書いたわけじゃないのに
非常にお気の毒だよね
その店主は戦後の鬱憤だけ、その後は刷り込みだよね
タブーのストリップと同じ
後になって逆算するとそうだけど
前は無いんだから
日本国歌も無かった時あったわけだからね
あれも三代目だからね
平川:ポップス伝でやったんですか
素晴らしい、網野善彦さんに聞かせたい番組だね
国旗国歌法案がスルッと通っちゃった
大瀧:2ndヴァージョンはイギリス人の憶えにくいメロディーなんだよ
ソノシートの音源しか無い
だから、なんでもそうなんだけど無い時があった、ということなんだよ
銀座化粧でも秋立ちぬでも銀座4丁目の服部時計塔が映る
あの服部時計塔が出来る前はあの服部時計塔は無い
後で、あれが無かった頃、じゃなくて
当たり前だけど前には無い
無かった頃の事を自分の中にイメージとして持つトレーニングをする
実を言うと古い映画を観るのはそのトレーニングをしてる
平川:原因と結果を取り違えないように


つねづね結果が出た後から振り返って論じてしまいがちです。
が、結果が出る前はどうだったのか、現在を前提にせずに
過去を考える。ある時は原因を考える事でもあります。


大瀧:もうそれについてどんな意見があるか
全部分かる
自分が予測した以外の発言や行動が出て来た事はまずない
ただし、その人はその意見が絶対だと思ってる
はっぴいえんどの再結成で評論家はこう書くだろうって文章を書いてた
江戸川乱歩みたい
寸分たがわないあれが平凡パンチかどっかに載って笑ったね


平川:銀座化粧で田中絹代が仕事から帰ってまず水を飲む
そういや昔みんな水飲んでた、あの習慣なくなったね
内田:宗教儀礼かな
外の物をそこで落としてという事
神社で手を清めるとか、やくざが次郎長三国志でも足をすすぐじゃない
大瀧:それ野球小僧の対談でも
ボックスに入る時に一礼する
あれは審判じゃなくプレイスなんだ
なんで道場入る時とか家に入る時、誰もいないのに礼をするの
かって聞かれるから
内田:無人でも「ただいまー」、一人で作って食べる時も
「いただきまーす」
大瀧:でも全世界で言ってないんだってね
内田:日本だけです。フランスはいただきます言わずにいきなり食べる
麻雀だってとにかく最初4人でアーシター!場に対して一礼する
大瀧:場に対して云々ていうのが消えたような気がする
小汀利得じゃないけど対人的に自分に利がある、心象よくする
野茂さんは審判からボールが来た時お辞儀するでしょ
あれはto the ballなんだよ
内田:あれボールにやってるんですか!
大瀧:だと思うよ
高校野球は審判にやってると思うけど、おもねってる
平川:やっぱり野茂だよね
大瀧:ロン!の感じだったね

平川:どうですか、今の政治状況は
全員:笑
平川:ああいう素晴らしい総理大臣を戴いて
言いまつがい、何なんですかね、あの人は
内田:もう長くない、年内にもう足引っ張られて
大瀧:あの人は「バカヤロー2」解散をやって
「バカヤロー2!」って言って欲しいんだよね
漫画マニアだけど、映画マニアだったら
「バカヤロー2解散」って見出しに出たら面白い
内田:まずあの人を下ろして与謝野が選挙管理内閣で解散した方が
まだ負け方が小さいだろう
平川:その前に再編じゃないの

10年経っても、この良識ある4人のイデオロギーは無力化して
いないと思います。
あのツートップの教養水準と階級格差的無神経への拒絶反応は
大きいですね。


大瀧:無理じゃない
昔の大フィクサーがいないとさ
今、小粒ばっかりで
映画界だって城戸四郎、藤本真澄
良かったかどうか知らないけど
そういう人がいたので原節子が松竹出演が可能になった
エンターテイメントをダイナミックに動かすのは
良くも悪くも豪腕の強権発動があったから
裏っていうか、それが当たり前、黒子は表に出ない
平川:音楽業界は
あえて言えば大瀧詠一
大瀧:僕はもうまるっきり無用者、何かやろうとも思ってないし、
やった事もないし
音楽業界もどっかまではいたのよ
酒井政利さんあたりまでかな
山口百恵のプロデューサー、フィクサーじゃないけど
大物プロデューサー
歌舞伎座映画っていう松竹の子会社にいた
あの辺の人たちは純文学が大衆文学より一つ上で
純文学を目指すのが文学青年の在り方
っていうのが色濃く残ってる最後の世代
だから山口百恵に文芸作品をじゃんじゃんやらせた
伊豆の踊子も田中絹代から、美空ひばり、吉永小百合、鰐淵晴子、
山口百恵まで、80年代のあたりで終わる
その流れっていうのは松田聖子の最初の映画、野菊の墓なんだよ
だから純文学を目指してた作り手がまだいた
そういう人がいなくなった。役目を終えたのかもしれない
よくわかんない
平川:プロレスにも、野球にも
内田:興行って世界だから、元は幕末のヤクザまで行っちゃう訳だから
平川:ロッキードの時、ぞろぞろ出て来て
あの辺で終わったのかもしれない
大瀧:ああいう人は国会はフリーパスだったらしい、ふふふ
そういう人がいないと
石川:たしかに必要だった
大瀧:大きな力、まとめ役が居ないとまとまらない
内田:大きな力っていうか、いろんなパイプを持って業種を
越えて個人的な信頼関係を持っているのがフィクサー
今は自分の専門以外とコラボレーションしない
ブレイクスルーっていうのは関係の無い物と関係無い物が
パーっとくっ付いてその瞬間スパークする、触媒になる人が
いま居なくなっている
大瀧:小物ってことだね

大瀧:おそらく与謝野説は当たってる
今年、福田も当てたし
内田:今年注目する人、福田康夫、甲野善紀、大瀧詠一
ずっと注目してるから今年も注目しています
大瀧:なんで俺の名前入れたのかいまだにもってよく分からない
肩書きが仕事をしてる人間じゃないからね
存在してるだけの人
平川:それでその存在感を発しているのはすごいですよね
内田:大瀧さん以外にいない
大瀧:僕ほど暇な奴はいない、って意味あいならね
平川:でも暇にした訳でしょ
内田:力技だと思う、強引にやらないと暇にはならない
じつに多くの人を絶望の淵に追いやった事によって暇になった
大瀧:そんなこたないさ
休むと、誰かが開ければ誰かが座る、つぎ座った人のために
なってる、芸能界座席論
Show must go on なんだよ

石川:大瀧さんの代わりになる人はいない
内田:30年前から僕にとって成熟のロールモデル
直前の先行世代でこの人の生き方を私の理想にしようって人は
大瀧さんしかいない
大瀧:未熟のモデルなら納得できるけど
内田:日本の伝統的な成熟とは、ある段階で隠居する、
権力とか財貨とかから
大瀧:福生の御隠居と言われてたからね、73年だもん24から
内田:その時もう隠居志向だったんですか
大瀧:いや、そういう名称だよ
たしかに老成してたみたい
言う事が大人びていた
前も言ったと思うけど中3の時、演劇部で国語の先生に
「お前ならそろそろ小津が分かるだろう、秋刀魚の味を観て来い」
62年にリアルタイムで観た
発言が大人びてただけなんだよ
平川:分かりました?
大瀧:分かんなかった
大洋の桑田が出て来たのに興奮して
この前見返したら阪神戦で投げてるのが権藤だったのを確認した

石川:大瀧さんの影響は音楽だけじゃないんです
生き方とまでは言わないけど音楽以外にも相撲、野球じゃない
けどあらゆる所に出現する
これは自分がやった、発見したと思ったら、どこに行って
も居るんですよ
大瀧:手塚治虫のオムカエデゴンス
秘密の小箱を開けるとオムカエデゴンスがゾロゾロゾロ!落ちて来る
石川:全部いろんな所に関心を持って
聴き方はある物だけ聴くんじゃなく浅く広くなべて聴く
それが自分が学んだ事
大瀧:小林信彦さんによると「広いようだが強い指向性を感じる」と
内田:好き嫌い言わないですよね
大瀧:そうですね
内田:FM横浜でバラカンさんとリバプールサウンドやった時
ハーマンズハーミッツ好きだって公言するってすごいなと思って
大瀧:事実として聴いてたからね
内田:子供の頃聴く時は何が良くて何が悪いって一応
なんとか格付けしようとするじゃないですか
中学から基本的に音楽ジャーナリズムから入ってるから
こういうのが一番とんがってる音楽だと
大瀧:我々の世代は娯楽中心主義だから
映画でも、それについて語るというと面倒なんだよ
観てる時は浴びてるから考えてるし感じてるし
ものすごく大量の物が自分に入ってる
それを一つずつ外に出すのが面倒で面倒で
だから、ね、語りたくない
平川:それだけ映画がお好きでしたら映画への志向は
なかったんですか
大瀧:ないですね、まるでね
平川:音楽にはあった?
大瀧:たまたま、取っ掛かり
結果的には音楽だったんだろう、と
音楽が一番向いてるんじゃないかって山下君に言われたから
たしかにそうだったんだろうな
他の事もできるようでいてできなかったんだろうなと
内田:映画作ってても何をやっていてもこんな佇まいじゃ
ないですか、今は
大瀧:細かく語れるから出来るってもんとは違うからね
ただ、語るならどんなことでも出来る上で語りたい
ちょっと欲が深いっていうことですか

内田:先程のお話の浴びるように
浴びちゃうと言葉にするのって縮減される
自分の経験のある部分しか言葉に出来ない
ましてや理論化する時はほか全部を切って行かないと出来ない
本当に享受する人は言葉にしない
逆に僕みたいに理論化したいって欲望が強い人間は
享受する時に切っちゃうわけ、端から
大瀧:瞬間にね、RAMの中で入れる入れないを決めちゃう
テレビ屋さんに近い
内田:自分の理論があるとそれに合うような物だけ選択的に享受する
浴びない
それが自分自身の経験を狭矮にしてたという反省がある
大瀧さんを聞いた時に
あ!こういう方法があるんだ
全部入れちゃう、好き嫌い言わない、理論づけしない、
序列化しないことによって、
その代償に経験の質が凄い深くなって行く
深くなればなるほど今度は言葉にしなくなった
石川:その影響が一番大きい、大瀧さんの
大瀧:浴びるっていうのが一番なんだね。浴びちゃうと
ほんとにもうあと何も無いんだよね
内田:かまやつさんと話してた「R&Rって浴びるものでしょ」
車で走りながらカーラジオからワーって流して、あれが一番
良い聴き方だ
俺はなんて間違ってたんだろう
考えてみたら心に残ってる経験ってそっちなんです
語ろうと思って聴いたのはダメなんです
大瀧:僕はあんまりやらないけど曲を作る時にネタ探しに
行くとロクなの無い、出来た物は全然ダメ
内田:文学でも音楽でも明確に語ろうとすると
結局経験の奥行きを犠牲にしなきゃいけない
本当に知らなかった
大瀧さんを知って気がついた
これからは説明出来ない物も受け入れるようにしよう
だからレッツオンドアゲンをほんとにバイブルのように聴いてた
これ説明出来ないでしょう、どう考えても
なぜこの時点でこの音楽がなきゃいけないのか
全く説明出来ないような物をごろっと差し出して
そのまま受け入れるしかないわけ
これを受け入れられたら次の段階
もしこれを説明しようとしたり、取り除けちゃうと
自分自身の枠がこれ以上広がらない
決断してレッツオンドアゲンを聴いた、身に染み込むまで
そしたらね、そこから人間が変わった、バリバリバリっと
僕にとっては マイルストーンになるような
ナイアガラーの踏み絵
あれ踏むとナイアガラーとして一段深くなる



モウリスタジオの跡地 


大瀧:たまたま内田さんの心理的なものと、それがちょうど
行き当たっただけで
僕も内田先生のように人間を変えたいと聴いてやろう
といっても、金の斧・銀の斧・銅の斧で


過去現在の軸と上下東西南北の3次元の視野。無限の地図を
持っている。我々はその地図の片隅のとある町の住人なんです。


平川:子供の頃から音楽を
大瀧:そんな量は無いですよ
有名なカラーに口紅事件
鉱石ラジオとか親戚の上の子の影響で聴き始めて
僕は母ひとり子ひとりなんで
全財産が僕に来ました
スピルバーグのような感じで
雑誌も全部買うとか、レコードは高校生の頃は出てる物は
ほとんど買ってました
金持ちじゃないんですよ
内田:周りのクラスメイトには
持ってって見せびらかすような事はしない
大瀧:聞いて来る人には語ってましたけど
みんな判ってたんじゃないですか
おそらく中学高校の同級生は、なるほどあいつならこういうこと
するだろうなと思ってると思います
石川:大瀧さんみたいな人って俺たちの周りにはいなかったね
内田:そりゃいないよ
平川:いたかもしれないけど
内田:僕らのネットには入って来なかった
大瀧:いたと思いますよ。いましたよ
だから細野さんだとか山下君だとか、会った時にはすぐに話が
合うわけだから
こんなにうれしいことはなかった
平川:みんな同じような体験をしてというか
細野さんの家に初めて行った時、ステレオの所にヤングブラッズの
シングルが飾ってあって
入るや否や、お!get together !
細野さんは試したらしいんだがね
そういう話が出来る人がいないんですね、地方には
だから東京に来て、ほんとにそういう友人、同じ趣味の人に会って
うれしかったです

石川:武蔵小山に骨を埋めるようになったのは、90なん年に行って
ペットサウンズレコードで初めてデイブクラークファイブの話が出来た
その時に大瀧さんからメールが来て
森さんから教えてもらったんだけどジェフリーフォスケットが
デイブクラークのI miss you をカヴァーして、バックにマイク
スミスが入ってる
それをHPに書いたら反応した方が
大瀧:びっくりした。新しいの全然聴いてないからね
その曲は、イギリスで出てない売れてない曲のB面なのに
当時のファンクラブの人にすごく人気があって
それをカヴァーしてる人がいるからびっくりして
石川:それがファーストコンタクト
それもペットサウンズなる店は、どういう店ですか?道順を教えて
僕がHPを作ったのは大瀧さんへのメッセージだった
大瀧:ゴーゴーナイアガラをアナログの6ミリテープで
録音してるって写真をガンッと載せて
石川:一回大瀧さんが観光船でしたっけ、載せてくれたんですよ
でも直後お話出来るとは思わなかった
ペットサウンズ、デイブクラーク、大瀧詠一さん
これが結びついたのがすごいうれしかった
これ以上のアイテムないんですよ
ペットサウンズ、デイブクラーク、大瀧・・・
平川:石川の人生に決定的な
石川:今アゲインやってるのも
そういう話が出来るとか通じるっていうのが分かるとチアアップされる

https://web.archive.org/web/19970222111933/http://fussa45.com:80/garakuta/
tour2.

html#7



ジェフリーフォスケットの『Sunnys off』


平川:ラジオにそうとう思い入れが
10年前からああいう番組を考えていたんですか
大瀧:今やもう非公開にしか興味がない
真実は非公開に宿る
公開する前提の時に神様降りて来ないような気がして
非公開がいつかPDになることを
メディアの技術的な事がある
戦前の映画を観てて、ものすごい人がいたんだ
すごい作家だったんだ、すごい監督だったんだ
全く知らなかった
文章があるとさ、何年後かに後世の人に分かって
もらえるかもしれない
ああそうか、と思っていま自分がやってる
そのジャンルではすごい人なんだけど
知らないとなると知らない
だけど50年後に
僕によってこの人がこの文章を読まれるとは
夢にも思わなかっただろうなと
自分に引いて考えてみると
どっかでそういう事をやってても無駄ではない


いずれ、川本三郎氏、片岡義男氏に発表する事になります。


内田:実は今日大瀧さんに聞きたい事が
ちょっと、ま、いや、来年にしよう
来年になると忘れるよ
その時思った事を言の葉にしておかないと消えるのと
タイムリーでなくなる。旬じゃなくなる
内田:最初に会った時にも話してて、2年前から
断片的に聞いてる
音韻の話
幸せな結末の出だしの
大瀧:ソ。音
ラで始まるのが音楽的に当たり前で歌いやすい
6thのソで始める歌は流行らないんじゃないかな
原曲の元メロはラでラララって録ってた
コード進行を途中で変えて詞がついた途端にソになった
理論的に不自然ではないけどすんなりは行かない
ラの方が出やすい
それとラで始めるのは
サビから始まる歌にしようという事があったので
ラを使ったのに
ありゃなんでソになったんだろう
ソで始めると流行んねえだろうな


形式を「君恋し」に倣ったという自説の傍証を
また一つ得ました!


内田:その時はおっしゃってた
幸せな結末の、髪をほどいての「ka」
大瀧:我々の時代はk aのkにストレスかける
以前の歌謡曲はkをもっと潜らせた
美空ひばりさんも
髪の乱れに手をやれば
kよりもaに力点を置いて歌う
kに置くと歌が壊れる
破裂音とか子音の強いものは抑えて歌うのが以前の流行歌

どうでもいい事でもたった一個の物を作る時には
百も千も考えて出してる
鼻濁音を濁音にするっていうのは弘田三枝子の途中から
コニーフランシス、カテリーナバレンテはガーガーギーギー言って
それを日本のカヴァーする人が濁音で歌った
65年くらい、鼻濁音が濁音になる
70年代に橋幸夫と桜田淳子がバカにされたのは
鼻濁音だと僕は思う
ぼんちが、西がたに鼻濁音は無いから
あるのは出雲だけ。だからほら砂の器で
もう家の娘は東京生まれ東京育ちだけど
濁音と鼻濁音の区別がつかない
僕はその出し入れ
東尾のコントロールじゃないけど
内角のボール四分の一出すか入れるかというような事と
歌い方のあれとを考えたんだよ
歌い方だけじゃなくてミキシングとかマイクの選定とか
イコライズとか、まだいろいろ、やればやったである
平川:構築的なんだね
内田:サラッと作ってるようで
大瀧:意図が見えたら終わりじゃん
話してるんだから、もう歌う気ないってこと
手の内みせてんだから、もう今や
考えて歌ってるんですね、って嫌じゃん
内田先生は内田語で書いて解説するけど
大げさなもんじゃない
こっちは大工の棟梁のみたいなもんで
こう打った方が、この角度から入れた方が
釘がよく効くよ
そういう種類の事なのよ

石川:私も聞きたい
大瀧サウンドには駒沢裕城のスティールが重要
昭和歌謡のディックミネもイントロ、間奏でよく使う
ここの音を出す時にキュって移る、安定しないのが醍醐味
大瀧:相撲だよ、相撲。
はっきり明確にこれってピントを合わせない
コブシをどこで入れるか
後では言えるけど、歌ってる瞬間は言えない
どこで入れるか感覚のトレーニングなんだよ
出たものはたしかに考えてみりゃあすこでって
それを構築的とか前段で言えるわけがない
どうやって出るのか、体のトレーニング
体に聞くしかない
レコーディングの時は一人で数うたってるだけ
誰も入れないで
だから聴いて、「へー」って言ってんだ。「ほうー」って
ここ上手くいったからってまたこう歌うとかやらない
だって出来ないだもん
なんでそう歌ったかわからない
結局は実技だからね
それを後で解説するのが理論
理論が先にあるわけじゃない
内田:理論が好きでどうもすいません
大瀧:でも理論を読んでなるほどね、と思うからね

https://www.youtube.com/watch?v=PiUhyz4doCU








ウララカ−インマイルーム