新春放談クロニクル 2009



  




2009

新春放談25周年
大瀧さん還暦を越えた10年前です。

達:めでたく大台をお迎えに
詠:もうすこぶる健康
達:顔色良いもん
詠:何にもしてないから
悩みの種が無い
魚類のようなもんですな
達:大瀧さん、髭を生やさなくなって
詠:歳とったでしょ
いつも女房に言われるんだけど
自分で綺麗にしてる位でちょうど普通なんだって
身ぎれいにしたつもりでちょうどだから
普通にしてると汚いんだって
達:しかし変わりませんよね
もともとちょっと老け顔のあれだったから
歳とっても変わらない
詠:だから若い印象の人は気の毒だね
どうしても言われちゃう
アイドルの人は50過ぎて60になると否応なしに
それ普通の事なのに、本来は
それと同じ例えになるかどうかわかんないけど
流行らない物が良いらしいね
流行らない物は廃れないからね
流行った物は廃れたって言われるから
達:新春放談しかお会い出来ないのが何年か続いてるんですが
近況を
詠:近況、だから変わらない、だからね(笑)
もう何年になるんでしたっけ
達:もう25年
詠:ずーっと同じですよ
ずーっと同じだったような気がします
もちろんいろいろあったんですけど
あなたの前にいると
何一つ変化が無しに来たような
最近は特にレコードを出さなくなってから
やらねばならない事
と思ったこともないんですよ
なんだけれどもそういう使役から解放された
ような、やっぱり解放感はあるんですよ
達:ようするに本当の意味でのご隠居さん
ノルマが無いという
詠:よくぞ言ってくれましたよね
73年に、福生のご隠居
達:私は言ってませんよ
詠:あなた言ってないの
銀次だろうか
達:か、松本さんか

達:何年か前にうかがったんですけど
60になったらラジオ番組を始めると
詠:95年ぐらいからラジオ局でやったりしてたんですけど
テーマが無い
やりたい事はある
発表するようなテーマにならない
ポップス伝も普動説も、たまたま上岡龍太郎さんに会って
その話になったら
あんた黙ったままお墓に持って行くのか
それはもったいない
どっかで公表すべきではないか
って言われたのがきっかけ
達:だいたい歳上の人が背中押すパターン多いですからね
自分がだんだん歳上になってきて
押す人がいなくなった
引く人はいても
詠:負うた子に教えられって事はあるけどね
タコじゃないよ、言っとくけど
これ何度か言ってるよね
以前のような番組?
以前のような物を鋳型において僕の行動を予測しても当たらないようですね
似たような事しかやらないんだけど
しかも元の水にあらず、が続いてる
ネタはタモリさんとカブるんですよ、最近
タモリ倶楽部よく見てるんだけど
去年偶然スタジオでばったりお会いして
かぶったネタについてちょっとお話ししましたけど
あの人は鉄道マニアと古地図をやって
その所でクロスするんです
達:大瀧さん、鉄道マニアなんですか
詠:いやいや古地図の方で
苔もタモリ倶楽部でやってたんだ
秋葉のオーディオ店に行くっていうのも
達:完全に同世代だから、メンタリティよく似てる
ダジャレのセンスとか
北と南だけど見聞きしてる物が変わらないんです
漫画でも3年4年たつと読んでる物が違ってくる
ベビーブーマー、大瀧さんの世代が大台に乗って
詠:やはり老兵は去るのみでしょ
達:もうかなり去ってるっての(笑)
詠:僕は去って早なん年なんだけど
テレビなんかだとタモリ、たけし、さんまっていう人たちが
まだ頑としているわけで
達:まあでも噺家さんだったら普通の事
詠:たしかにね
達:落語に取って代わる物でテレビのメディアが新しいから
そういう年代の人がやる歴史がなかったからで
詠:こんな長いのは珍しい
ラジオの時代に徳川夢声さんとかいたんだけど、
そんな感じですかね、今のお三方は
達:圓生さんが御前でやられたのは77だか6だか
詠:圓生さんは歳とってから良くなったんだよね
志ん生さんは面白いのは分かるけど
あれだけ圓生、圓生って言ってた時代があるんですよ、70年代
今だれも言わないね、不思議なんだよ
達:やっぱりブームでしょう
たぶんアイテムが無かった
僕の個人的な意見ですけど
「圓生百席」が良くなかった
詠:あれ良くないね
でも、それすら知らない人が志ん生のCD聞いて、まったく圓生に行かない
あと七不思議のもう一つは
木下恵介の映画が評価されない
個人的な意見は横に置いても
黒沢・木下時代、あるいは吉村入れて三巨頭と言われた時代があったのに
黒沢、相変わらず黒沢・小津って言われるのに
木下恵介の方が売れた、すごく大衆に支持された
そのわりにぜんぜん言われないっていうのがなんか七不思議
達:分かりませんけど、映画的だから
逆にアレなんでしょうか
詠:僕はあれはリアルタイムで観ました
達:あれはほんとにヒット作でしたもんね
詠:あの灯台行きました、ロケ地巡りで(笑)
達:僕も喜こびも悲しみも幾年月を文芸座で封切りで
観たのよく憶えてます
今は昔の話です
後ろ追ってるだけですから

木下恵介と大瀧さんは同じ命日です。円覚寺の小津安二郎のお墓の
すぐ近くにあるのでついでにお参りしたような、しなかったような。

詠:何をおっしゃいますやら
70年代はだって圧倒的に詳しかったからね
寺尾次郎みたいのもいたしね
達:寺尾とは一回も映画の話したことない
言わないんだもん、あいつ
詠:知り過ぎてるからね
達:字幕書いちゃうんだもん
詠:寺尾次郎とか出ちゃうんだよね、字幕に
人に歴史ありだね
達:今聴くとベース上手いんですよね、けっこう
ろくすっぽ聴いてやしなかった
詠:鰐川君がごついベースを弾いて
寺尾君はスマートな感じに聴こえた
達:なんか多才とういうか
詠:すごい人だったんだね
ぞんざいに扱って今は過去を反省し
なきゃいけないね
達:どっかでくしゃみしてますね
詠:いろんな人が集まって
やっぱり才能は呼ぶんだね
達:人の出会いって不思議なものですよね
今から考えても妙な
そこで出会うべくして出会ったんだろうけど
詠:後になるとそう思うんだけど
達:その時は別にドラマ性もない
日常の一コマでパッと
何の意図もなく偶然としか言いようがない
それがだんだん肥大して行く
詠:不思議だね
歳をとるととるだけ
新しい邂逅がだんだん少なくなるから
過去の邂逅がいかに重要だったかと
達:でも若い方とお話ししてるんでしょ
詠:そうですね。30代後半から40代50代
映画マニアの人と、年に2、3回は
達:そうするとまた新しい刺激が
詠:彼らも古い物しか観ないので
制作の現場にいたりするんだけど
彼らは僕に合わせてくれてるから
昔の話題だけで終始する
達:相変わらずご覧になってるんですね
詠:結局、僕もほら後追いだから
2年前に始めたばかりだからね
達:だけど、新着映画年に200本とか
観てたじゃない
詠:昔ね。以前はね洋画オンリー
ある一時期ね、80年代から90年代の前半
達:集中型人間
詠:24時間やってる時期あったでしょ
達:バブルの時期
詠:必ず仕事が終わると1本観て帰りましたよっていう時代ありました
達:そういうのは昔からあったじゃない
だってそれこそ文芸座のオールナイト
詠:日本映画を目的を持って
テーマを抱えて観るのは
やっとこ2年ぐらい、そうです。新参者ですよ
達:だけど日活アクション物とかさんざんリアルタイムで
詠:あれはね、基本の素養ですよ
我々の世代
達:それは基礎教養なんですね
詠:音楽でも同じです。取り立ててマニアでもなんでもなく普通なんですよ
達:自分はそうだと思っているけど、周り見てみたら、実は浮いていたと
詠:転校してだいたい2年しか居ないのが3回も続くと基本的に浮きますよ
達:大瀧さんの世代は高校中学の頃の話題はラジオとかですか
御三家とかじゃ
詠:特定の友達とはビートルズとかあったけど
とんねるずやダウンタウンからクラスで笑わせるのが人気者になったでしょ
普段話さない人との話題というと日常的にはそうだった
芸ごとは話題の中では特殊な範疇だった
達:僕らの時代はビートルズビートルズビートルズ、バスケットだろうが
バレーだろうが剣道だろうがブラバンだろうがみんなビートルズでしたからね
詠:新曲が、次がどういう物か待たれていた時代
その前の60年代からあって、どっかで消えた
達:西郷輝彦とか舟木一夫とか、モロ中高でしょ
詠:「高校3年生」が中学3年だった
まさに美しい十代
達:つうことはクレージーも
詠:もちろんありますよ
クレージーとエルヴィスですね、中2は
達:そういう同好の士はいたんですか
詠:一人だけね
達:クラブは何だったんですか
詠:演劇部。無理矢理だよ、欠員が出た
自分から志してじゃない
達:大きくなったら何になりたかったんですか
詠:アナタ、子供電話相談室じゃないんだから
車掌さん
達:車掌さんからそれで何に転換
詠:事件記者だね、テレビで
達:影響されやすいですね
詠:100%メディアの影響化にしかないよ
達:へそ曲がりのようで素直なんですね
詠:まるで素直だよ、人の言った事すぐ信じるもの
達:最初は従順に追って行くんだけど途中で変だなと
詠:それと欠員で。おいちょっと、あ良い所に来たって
達:その時の演劇って何でしたっけ、出し物、えっと
詠:中3は与平ですよ、鶴の恩返し
これ言い得て妙だね
今にして思うと、人に見せないヴォーカル(笑)
達:なるほどー
詠:無理矢理こじつけ
達:スゴイな(笑)
もう35年前となんにも違わない
詠:よく言われたんだよね
なんでもこじつけるなあー
いや関連性ないのかなあ
提示してるだけで断定してるわけじゃない
達:分かるから大丈夫(笑)
シャレですよ、シャレってやつ
詠:本気じゃないんだから
達:最近シャレが通じない
詠:なんかシャレに突っ込むんだよ
達:ラジオで言うと「なんてこと言ってんだ」
詠:これを文字起こしなんかすると
そのまま取るから
東スポじゃないんだから
達:掲示板の悪い所
詠:特に日本語はそういうニュアンスのものだから
言葉じゃないチャンネルで
相手があって、身振り手振りや
雰囲気や空気なり電磁波なり
いろんな物でコミュケーションしてる中の一つの表層として言語がある
だから、何にもやらなかったり何も書かないのは
なんかやるとあえて誤解のネタを提供するだけになるんじゃないかと
思ったのさ
達:これもシャレですからね
詠:坂崎幸ちゃんの番組の本で文字起こし
以前なら簡単にOKしてたんだけど
最近、文字情報がさらにどっかに流布されるから
しかもほんとに憶えてないからね、何ゆったか最近
編集の人が言外のニュアンスを一生懸命文字に入れ込もうと
してくれて
達:正岡容「小説圓朝」を読了したところ
明治の落語の速記者がいかに優れているか
字を読むだけで咳払いとか抑揚まで読み取れる
空気を文字に写せるかに命かけてた
昭和になってくると単なる喋った事の
詠:字ヅラ
達:になりつつある、それを憂いている
詠:字面は無いよりあった方がいいと
みんな思うかもしれないが
逆に誤解を与える、かえって悪い方に行ってる
っていうのが僕の昨今の考え方
達:ネットの掲示板は文字をすごく今まで以上に
それのマイナス面も広めるから
誰も予測つかない事でしたが
詠:間に人が入る事が非常に大きい事でその人の力量が
達:昔は新春放談もエアチェックするとかリアルタイムで聞いて
何バカな事いってんだ、空気とんでって終わったものが
詠:こんなの聞き流すのが一番いいんだよ
以前よく貰ったのは
何にも分かんなかったけど楽しいそうだった、って葉書
Time to kill なんだから時間つぶしなんだよ
達:「公共の電波を使って」みたいな
詠:いやあ公共の電波ねえ
達:それ言ったらああいうテレビ番組はどうなるんだ
全部シャレです

わたしの文字起こしは構成しようという作為が強すぎますね。
そう踏まえて読んでいただければ。

詠:ほんとに日本語っていうのは凄くて
そういう相手の心を忖度する
金田一春彦さんの講演、ラジオで聞いたんだけども
菊池寛が東大入るために高知から上京して
蕎麦屋に入った、お腹が空いてお金が無い
一番安いモリカケを頼んだ
そしたらちゃんと掛けのうどんが出て来た
これを金田一さんはこう解説してる
モリカケという品物は無い
今なら例えばファミレスでも
モリカケという物はメニューにございません
と言われるのが関の山
見るところ学生さんだ、地方から来たのだろう
蕎麦屋が初めてでモリカケが分かんないのだろう
たぶんこの人なら一番安い汁物でお腹が
いっぱいになる掛けがいいんだろう
なおかつ言葉に関西のアクセントを感じた
だから蕎麦じゃなくうどんにした
んだっていうんだよ
これは凄いよね!
日本のコミュニケーション以外に
他の国ではあり得ないんじゃない?
知り合いがアメリカ行って
バニラを頼むのに延々通じなくて
違うもんに変えたっていう
発音が1億個あるわけじゃないのに
バニラぐらい判れよな

あの総理にも聞かせたい。

達:そういう客商売の人間の審美眼
人を見る目は侮れないっていう
僕の知り合いのあつらえの洋服屋さんの話
若い人が予算が無いがスーツを仕立ててもらった
その人がグループで居酒屋に行った
親爺が「あんたの背広預かるよ」
他の奴に「あんた達のはいい、
この人のはそんな所に放っておく
ような背広じゃないんだ」
それだけ衣紋掛け立ててくれた
それを洋服屋さんが聞いた時
ほんとにうれしかったって
詠:分かるんだね
達:ちょっと恐ろしい話なんだけど、だから侮れない
詠:普段いちいち言わないんだよ
分かってる人ほど言わない
今はアイラブユーとか
表現しないのは思ってない事だと
教育しようとしてるがそうは行かない
っていうんだよ
達:とんでもない
詠:言わないんだが
言わないからといって相手が
分かってない訳ではないな
という心を常に持っていなければまずい
金田一さんは逸話をいっぱい持っれてる
すごくユーモアのある人
〜うちに帰りますと父がおりまして
金田一京介なわけですけれども
そういう言い回しするんだよ
〜石川啄木さんがよくお金を借りに来まして
うちも辛いんですけど
あの人はね返さないんですね
とかすっごく面白いんだよね
達:なかなかね、凡人にはね
我々みたいベラベラ喋ってる人間は
どこまで分かって言ってんだか
詠:なあに言ってんだかって聞いてもらわないと
達:本当に知ってる人は
落語の名人みたいに何も喋らない
お茶飲んで顔拭いて(笑)一言も喋らないで帰る

詠:最近落語会行ってんでしょ
達:時々です
寄席に行きたいんですけどね
ずーっと見てなきゃいけないし
途中で帰ると悪い感じが
詠:でも、あれはね我慢の鍛錬で
間の我慢が次の物を面白く聞かせてる
ってこともあるんだよ
自分のレコメンドされたもんだけベスト1として
ただ受け入れるのは
能面のようにツルっと行っちゃう
デコボコがない
たまには向こうから強制される
時間を束縛される事も必要だよ
そうしないと快しか求めない
あえて不快を求めないでしょ、人間
達:最近、事務所の若いバンド見に
ライブハウスへ行くと4つとか出るんですよ
1バンドが20分から40分
Aというバンドが出るとAのファン15人
一番前でこうやってやるんです
それ終わると帰っちゃう
次にBというバンドが出てBのファンが
替わりに行って
昔だったら2バンド合わせて客が30人いたら
2バンドとも見たじゃないですか
詠:つまんないとなんか投げられたり
達:それでも一応見るじゃないですか
お金もったいないとかいろいろありますけど
いま見ないんですよね
詠:はっぴいえんどなんかそう見られた
なんだか面白くないバンドだったけど
あれがそうだったのかー
達:シュガーベイブも絶対1番目じゃないと
ウエストロードと上田正樹の間に
入ったら野次られるから
地獄ですからね
バンドも耐えなきゃいけないし
客もあれですから
それで「帰れっ」て言ってる後ろに
10人ぐらい「こいつ結構イケるんじゃない」
って思う人がいるかもしれない
そういう人が下北ロフトに来てくれたり
詠:卒業式とかの来賓の祝辞
忍耐の鍛錬だったのかなって気がしてきた
達:学校の授業だって似たような
詠:まあね
中身がどうのとか、やる意味があるか、とか
問いが間違えてるんだ
達:昔は五書五経を無理矢理詰め込んで
暗譜させて
それが18ぐらいになると
あ、そういう事だったのか
と、後で分かると
達:戦後教育そういう事ないから不幸な感じ
詠:いまだに説明書よまずにソフト始める
私の悪い癖
不思議なことに憶えてから読むとよく分かる

内田樹「街場の教育論」(08.11)で、まったく同じ
提言が書かれてます。
「思いが余って言葉が足りない、思っていることを
そのまま言葉にしなさい」という国語教育への危惧。

負うた子に浅瀬を教えられ
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず
とか、今ググってしまわないように、古典を暗記
しておかなければね。

達:ところで、お家のオーディオはどうなってますか
詠:いや、だからさ、30年かけて作った
システムは
一朝一夕に戻んないのよね
ようやくなんとか、2年ぶり
達:その改築した、あれは、ちゃんと、鳴りは
詠:ようやく鳴るようになりました
これからは期待していただいて結構です
達:最近はアナログ盤なんですか、どちらなんですか
詠:この3か月はタツローフロムナイアガラ
ばっかりですね
それでまたサウンドチェックをして
これで福生スタジオの音決めやってます
達:最終的に曲順はこれで
詠:どうぞ聴いてみて御判断あおいで
達:フィックスじゃないと言えないけど
ボーナストラックあるんですか
詠:10曲なんですよ、5の5
コロムビアもそうだったんだよね
曲順は違うよ、自慢じゃないけど
さすがっていう、言っとくけど
ボーナスは3
ほら、幸せにさよならのソロと
ドリーミングのモノ
シュガー短縮版
あれ長すぎるから
いいんでしょ、あんなもん
達:結構です
詠:曲数あんまり多く入れるのは
とがみえいじとみかみきみえじゃないけど
あーんまり長いのはーお耳のオジャマーでーす
長いのは良くない、短くしようよ
何度も聴きたきゃ繰り返せばいいの
達:集中力が続かなくなるし、歳とると
詠:長いと二度聴こうと思わないから
達:何が14曲目で何が15曲目か分からない
詠:今回は一つのトライだけど
万が一、次の世でもミュージシャン
やるような事があったら
ニューアルバム作る事になったとしたら
秘策はあるよ
現世では無いと思う
達:大瀧さんの最長分数は
詠:ビーチタイムロングか、60分入るって言われたから
短いのはファーストでしょ
達:ナイアガラムーンも短いですよね
詠:でも充実してるよね、どっちも
達:ナイアガラムーンは濃いもん
詠:随分お手伝いしてもらいました
これもう新春放談3回目ぐらいだけど
マイク1本で無指向で、何歩さげさせたか
最後、つい立の後で「バナナボートダヨ!」
この人デカイんだよ、一人だけ
達:はァーーあれから35年
詠:ほんとに密度が濃かった
やらされた方は嫌だったろうけど

達:ロングバケーションのライヴ
新宿厚生年金の映像をこの間観ましたよ
観たことないんですか
詠:べつに観たいと思わないですけどね
達:天然色から始まってユカリがドラム敲いてましたよ
詠:ユカリ、ドラムだったの?
とにかくね、物忘れが激しい
憶えてなくていいと思った事は
ずいぶん忘れてるようですよ
達:忘却とは忘れ去る事なり
詠:菊田一夫じゃないんだから
YouTubeにあがた森魚の映画の
僕の唯一の映画作品の一部分がアップされてて
達:僕は天使じゃないよ
久しぶりに観たのよ
中央線の踏切を渡るシーンがあった
ぜんぜん憶えてないのよ
だから昔の映画観てて、あの場所はどこだろう
と思って
まだ主演の人がご存命の場合に
人を介して「あすこの橋はどこでしょうか」
って聞くけど
俺なんて1本しか出てないのに踏切も憶えてないのにさ
何百本出てるような人が憶えてるはずがないよね
監督ですら自分で決めても憶えてないのに
出てる人は言われて行っただけだから
憶えてたら奇跡だよね
だからさ、自分で探すしかないんだよ

達:そういえば小津安二郎の映画の場所を
巡ったって大瀧さん、だった、っけ
詠:成瀬のね
達:あ、成瀬巳喜男(笑)
詠:小津も多少は
達:それで古地図なんですか
詠:それもあるんだけれども
達:現存してます?
詠:ある所にはある
だいたいが1950年、進駐軍が帰る前後と
もはや戦後ではないの54、55年でけっこう違う
たまたま、この2年前だよ
達:なに思いついて?
詠:たまたま
自分が歩いてた所がそこだった、
単純に
ご承知の通り、乗り掛かると
だいたい最低3年、前後1年入れて
5年その場所に留まる
達:じゃまだ3年あるな
詠:今まん中ぐらいに来たかな
そろそろ何人かの他流試合を
達:そういう備忘録とってんですか
詠:やってますよ
自分自身のためのホームページみたいなやつ
えんえん何ページあるかな
膨大な量ですよ。昨日も書き換えてるから
自分のハードディスクだから
毎日書き換えてます
達:ようするに一人遊びですからね
詠:基本的にはね。子供の時からずっと
達:人と共有しなくてもいいんですね
詠:共有したいって人が何人かいて
今のところ5人メンバーがいます
30代40代50代60代
僕以上の人もいっぱいいるし
去年も言ったかもしれないですが
川本三郎さんの本に触発されて



銀幕の東京
自分の歩いてる地面が成瀬の映画だった
のをどっかで知ったんですけど
その本でまた火が点いて
久しぶりですね、70年代
小林さんの日本の喜劇人のような
何度読んでも新しい発見がある
自分が知らないから
自分が分かった事が新たな発見に
まだ半分ぐらいかな
銀幕の東京に出てる映画を
全部観たいわけですよ
日本の喜劇人も世界の喜劇人も
あの中の物を
全部観てやろうと始まったでしょ
8割ぐらいは観たんじゃないかと
やってるんだけど知らない事だらけでね
ジャンルが違うから大変ですよ
達:読んでみよー
ようやく取り組めるようになった
若い頃は余裕が無かったでしょ
詠:第1部終わり第2部終わり
第3部終わりで
新たな第4部が始まってるっていうことなんだけど
いちいち見えてないから
達:普通は本にでもするんですけどね
一人遊びですからね
詠:永遠の一人遊び
音楽の15年間が永遠の
一人遊びがたまたま外に出てしまったというだけ
達:南方熊楠ですからね
詠:足元にも及ばない
なんとか生きてる内に足元にぐらいまでは
這いつくばっても頑張ろうと
ご指導ご鞭撻よろしく
達:期待してますよ(笑)
って言いたいところですが、勝手にやってください(笑)


ガイドは少なめに流れを楽しんでもらいました。話題転換が絶妙です。
第1週は、大瀧詠一的から間もなく、映画に没頭してるのが分かります。
今は衛生劇場で川島雄三の全作品放送をやってるんで、東京映画の
マイライブラリーが増えてます。
また、寺尾次郎氏の話題、ライヴ音源の話題、いま注目の想い出話も
飛び出しました。
2、3週目はジェフ&エリーとアルドン系ライターのテーマなんで、
今回はそれを外したギュッとした回でした。



第2週、3週は、本題のジェフ・バリー&エリー・グリニッジ
特集。ノーカット・最新リマスターです。


達::この間ヘレンミラーをやったんですよ
詠:やりましたか、ずいぶんな事やりますね、あなたも
世界中にいないでしょ、ヘレンミラーなんてやる人
第一知らないでしょ、今や
達:と思うでしょ、YouTubeはけっこう出てますよ
詠:外国人?
達:ボビーヴィーのCharmsを
Is this the Chinese melody?とか
詠:なるほどね、面白い
達:僕、ようやく大瀧さんの後塵を拝して
スクリーンジェムズをこつこつ集めて来たんですけど
大瀧さんはバリーグリニッジが自分にとっては一番メイン
おっしゃってる
僕はよく分かったけど
ヘレンミラーとジャックケラーなんだなって
詠:ジャックケラーだよ
言わなかったっけか?
達:いーえ
詠:あーそう
これ言おうと思って来たの
俺はジャックケラーなんだ、ヘレンミラーでもあるの
達:よおく分かった
詠:分かった、さすがだなあ
っていったって誰が分かるんだこんな話
日本中の誰も分かんない、ああオカシイー
達:いいんです、分かんなくたって
詠:つくづくね、ジェフとエリーだって言われて
誰かがジャックケラーって言って来るかな
と思ったら君だったね
達:よーく分かりました、この歳になって
詠:本当の産湯はジャックケラーなんだよ
体質にも合うんだね
達:分かります
この時代性のクリシエがみんないろいろあって
キャロルキングにはキャロルキングのクリシエがあって
ヘレンミラーにはヘレンミラーのクリシエがあって
ジャックケラーのクリシエがいちばん大瀧さんの
センスに近い
詠:近いんだよ、おっしゃる通り
あれを日本文化に移植しようとしてもないんだよ
達:ソンググラフィー見て、これがジャックケラーで
こっちがヘレンミラーで、こっちはエリーだけど、
ここはトニーパワーズとやってるとか
そういうのがバラッバラにあるじゃないですか
スクリーンジェムズのソングライターの
キングゴフィン、マンワイル、セダカグリンフィールド
3大コンビじゃない人たちは雑多に交錯してるから
よく見て行かないとその人の特質が見えてこない
その他に配分されて
詠:その他が好きなんだよ、俺は
一番のポイントなんだよ
達:ジャックケラーでもよかったんですけど
まだ全部集めきれてないので
詠:いや、あなたの方がいっぱい持ってると思いますよ
ジェフとエリーって言われて
もうあれから30年経つのか、ラジ関で特集やって
達:ゴーゴーナイアガラの一番最初がキングゴフィンで
詠:もう32年33年経つんでしょ
びっくりした、30年ってハンパじゃないでしょ
あんなに前なのかと思って
自慢じゃないんだけど自慢なんだけど
あれ以降ぜんぜん研究してないんだよ
そういう奴なのよ、俺は
だから今はあなたの方が圧倒的に詳しい
達:とにかくエリーグリニッジっていったら
大瀧さんの家に初めて行った時
詠:あんたシングル盤もって来たね
達:I want you to be my baby
詠:福生スタジオに山下君が
初めて現れた時に
これは有名な話、新春放談で何度か
出てるかと思いますけど
エリーグリニッジのシングル盤だった
達:UA盤のボブクリューがプロデュースで
詠:代々木の近辺の中古レコード屋
達:かっこう、1枚100円
詠:また擦り切れてるんだよね



達:なんであの時にエリーグリニッジかっつったら
大瀧さんはバリーグリニッジのファンだ
なぜかって、フィルスペクターのファンは
バリーグリニッジのファンだっていうのが
イーコールだった時代だった
それで大瀧さんはアメリカンポップスのオーソリティー
だっていう事を僕の周りがみんな言ってたので
一番最初に行く時にやっぱり果たし合いだから
詠:ここが良いよね
達:舐められない物を持って行くには何がいいか
詠:すごい、この時代的に
伊藤大輔好きなだけのことはあるよ
果たし合いと来たよ
達:その後に一番ぶっ飛んだのは
Cha Cha Charming。エリーゲイ
詠:あれが史上初
世界中のカヴァーで初だから
アメリカのスペクターマニアのHPに出てます
達:あれ持ってたんですか
詠:宮下さんですよね、変なオムニバス
エリーゲイがどうもエリーグリニッジらしいみたいな
達:じゃ、まだ確証は無かったんですか
だけど千九百七十、だって7年ですよ
バリーグリニッジなんて今誰も知らないって
31年前にCha Cha Charmingなんですから
誰も知らないですよ

https://www.youtube.com/results?search_query=ellie+greenwich


詠:今のような、そりゃヘレンミラーのYouTube
があるなんていうような時代ではさらさらない
わけですから
達:これ聴いてエリーグリニッジってYouTube行きゃ
かなりの数は出て来る
ロネッツとかクリスタルズの実像とともに
出て来るわけで
詠:今はね
達:あの頃はね
詠:見たことないもん
達:動いてるのすら見たことない
詠:写真だからね
達:Cha Cha Charming、良い曲だったんですよね

達:エリーグリニッジのインタヴューを読んだ事あるんですよね、
昔。当時のニューヨークのスタジオ・シーンで
女性ってほとんどがコーラスガールか
作詞家、ごくたまにピアノを弾いてアレンジしてる人
そういうのをえっとね、なんて言ったかな
きょう調べて来たんだ(ゴソゴソ)
詠:高気圧ガール?時間つなごうかと
達:After Singer って言うんですって
ようするにコーラスガール上がりの
作詞家とか作曲家とかみんな
でも、自分はアフターシンガーのキャリアじゃない、と
詠:歌手くずれってことじゃない
達:ようするにそういうことです
はんぶん蔑称なんですけどね
彼女は始めからリーバーストラーの事務所で
デモを歌って、デモ・クイーンと言われた
デモがすごく出来が良いので
レインドロップスなんかで出した
それで特にダスティスプリングフィールドと
彼女は声がよく似てるので
詠:似てるね、ちょっとザラついてるからね
達:ダスティスプリングフィールドはご存知のように
アメリカの作家をよく使ったでしょ
不特定多数の出版社がダスティスプリングフィールドに
売り込む時のデモを全部エリーに歌わせた
詠:へーなるほど
達:その後にダスティスプリングフィールドに会ったら
彼女の歌ったデモを全部持ってた
詠:おおー、あ、そう

達:フィルスペクターがバリーグリニッジとくっ付き
始めたのはいつ頃なんですか
詠:自分の中で?
名前見たのはBe My Babyなんだけど
その時にはさほど、曲の良さだったの
Do Wah Diddy Diddyなんだよ
達:マンフレッドマン
詠:リヴァプールはすっごく大きいの
僕の中で、再評価っていうか
えっーと思ったわけ
Be My Babyと同じ作家と思わなかった
リヴァプールはイギリスのもんだと
思ってたから
リヴァプールがあんなにアメリカだったって
いう事に気づいた
藤本真澄の東宝の喜劇が松竹の城戸四郎的だった
というのと非常によく似てる
これ分かるのあなただけ
達:良い比喩だな
詠:良いっしょ?これ以上の喩えないんだ

研究中です、「大衆娯楽東京映画」。

達:マンフレッドマンのDo Wah Diddy Diddyって
日本でヒットしたの
詠:大ヒット大ヒット
達:僕はヒト世代うしろだから、ゲイリールイス
詠:ちょっと気の抜けた
サンマをおしたしにしたような歌だった
達:八木さんのパックでもかかりまくってたのは
もうかなり後でした
詠:ポールジョーンズの男性的な
マイクスミスとか
後のトムジョーンズにも通じる
達:セクシーなんですねR&Bになり切れない
詠:まるっきりのR&Bでなくって中間的な

達:ウララカをされた時はすでにバリーグリニッジという
認識でやったんですか
詠:やってます
Da Doo Ron Ronをベースにしたと解説にもちゃんと
書いてるし
はっぴいえんどの3枚目、アメリカ録音して帰って
来た時に
アルドンの3種類の事やアメリカンポップスの事が
だいたい分かりました
自分が何やってたか、ソロがちょうどあの頃だから
達:あの時アメリカでレコード買い込んで来てかなり
音源が手に入った
詠:手に入ったのと、レコードリサーチ
レコードリサーチが大きかったな
あれで資料の整理をして分類にものすごく手助けに
なかなか手に入んなかったからね
達:僕オールナイトニッポンの2部を始める時に
朝妻さんがくれたんです
「ラジオ番組やるならこれが必要だ」
詠:亀渕さんのオールナイト出た時に必ず横に置いて
あったの
ああ欲しいなあ
達:もうこんなもんどこでも売ってんだもん、トンッ
詠:このレコードリサーチが欲しかったんだよねー
小沢昭一さんのハモニカが欲しかったんだよ、みたいな
感じだよね
だから手に入ってほんとうれしかった
そういう飢餓感
手に入ってうれしいのは飢餓感の前段があるからのような
気がする
達:これから先そういう時代にまたなるのかもしれません
けどね



達:ウララカはDa Doo Ron Ronのオマージュソング
そんな人それまで誰もいなかったわけです
詠:意図的にはね
結果的に似てるってのはあったとしても
達:Be My Babyをカヴァーした人はいた
弘田三枝子とか和製ポップスのカヴァーとしての
Be My Babyはあるけど
詠:スペクターサウンドではないんだ
達:ぜんぜん違います
詠:Be My Babyという楽曲をカヴァーした
達:あれは出せないという諦めが前提にあって
それをGet over するためにはある種の
批評性というか諧謔性が必要だけど
それはウララカが最初
詠:12月の雨の日でカムバックしたスペクターサウンドを
やってるわけですよ
My Sweet Lordをさんざん聴きまくって
12弦を何回もダビングするとか
達:意図してたんですか
詠:やりましたよ
達:その時のスペクターというのは
詠:スペクターが再び出て来てショック、びっくりした
その後にジェームズテイラーでキャロルキング
が再び脚光浴びたのと同じぐらい
え!また出て来た!
それだけBe My Babyという曲は
ブライアンウィルソンじゃないけど
自分にとってものすごく印象的な曲だったから
その後、スペクターサウンドをやろうとした
ウォーカーブラザーズとかスペクター的な物を
ずっと追いかけてたから
で、途中で名前が聞こえなくなって
なんかいろんな噂が流れて
いた時にジョージハリスンで出て来るっていうのが
ふっンッゴクびっくりした
で、チャートで1位になってるわけでしょう
いや驚いたね。自分の時代が来たのかと

達:バリーグリニッジってことになると
スペクターとの一連の仕事とレッドバード
シャングリラスとかディキシーカップスとか
聴いてらっしゃったでしょ、当然
詠:Leader of the packぐらいなもんですね
愛のチャペル、あれヒットしたよ
聴いてはいたけど、あの頃シュープリームスの方は
買ってたね
達:大瀧さん、モータウンはけっこう影響されました?
詠:影響されてます。大好きでした

ゴーゴーナイアガラではシュープリームスかかってませんが。

達:ガールグループ好きですね
詠:やっぱりね。それはどうしても白人黒人問わず
エンジェルズのMy boyfriend back
シフォンズのOne fine day
ロネッツ、クリスタルズ
あとガールシンガーですね
ジョニーソマーズからレスリーゴア
うん、そこは中2中3ですよ、あーた
それを除いては単純に、
あれを端的な一つの音楽としては
語れませんよ、私の場やい
達:そういうガールシンガー、ガールグループで
最もアイドルは誰なんですか
詠:うーん、難しいね
みんな好きだったからね
達:ルックスじゃなくてシンガーとして
詠:全部
達:じゃ、ルックスは
詠:ルックスは関係ないことはないんだろうけれども
考えたことないね
耳から聴くからみんな美人に聴こえるけどね
ジョニーソマーズのちょっとハスキーなのも好きだし
ペギーマーチの切々としたティーンネイジャーの
感じも良いし
レスリーゴアのは曲がぜんぶ良いから、なんと言っても
達:そうやって聞いてると全て名前の上がった物は
バリーグリニッジの作品がある
詠:あります
達:ガールポップに関してはこの人たちを外して
詠:語れないんです

達:どっかの本にあったけど
River deep mountain high を作った頃に離婚した
らしい
詠:仲を裂いたのはスペクターじゃないの
River deep がとにかく全てのトラブルの元だね
歌った人たちもすごい人生に
達:あすこからおかしくなっちゃった
詠:呪われた楽曲だね
達:そういうのあるんですね。それがきっかけで全てが
詠:あるんだ。四谷怪談やる時は四谷稲荷いってね
ニルソンは良くやったな
彼らのしがらみを全部抜いて
完璧にローカットしてやってるから
達:ビリージェイクレーマーやってません?
イージービーツかな、ブリティッシュは
結構やってますよ
詠:イージービーツ、オーストラリアじゃないの
達:あ、そうだ
イギリスじゃ大ヒットですからわりとカヴァー
してますよ
詠:でもなんか悩みの産物だよね
心理学者が好みそうな音楽のような
達:大瀧さん、あんま好きじゃないですか
詠:今いっちょだな
ミックスが迷ってる。ラリーレビンも書いてるし
オーヴァープロデュースという事もよく言われるけど
作ってる側の思いが
音がとにかく飽和状態、more!more!で
エンジニアとしての面白味はあるけど
なんかどっかね、曲の肝心な物を削いじゃってる
ような気がするんです
達:全盛期のウォールオヴサウンドって実はそんなに
エコー入ってない
詠:入ってないし、曲ももっとシンプル
ジェフとエリーは何が良かったって、とにかくシンプルなんだよ
シンプルイズベストで
CFGをあんなふうにメロディアスに憶えやすくするのは
遠藤実と張るんだな
遠藤さんはとにかく単純なメロディーを、憶えやすい物を、
という天才なんだよな、あの人
それに似たものをジェフとエリーに感じる
ただCFGだけで終わらないので
達:ヒネリが
詠:捻るんだよ
それが4小節だったり8小節だったり
するんだけど、ヒネリが上手いのよ
で、ジェフとエリーのヒネリを上手く持ってった
なと思うのはI feel fine
達:ホーッ
詠:???4小節じゃん
あの気の利いた小サビって言うんだかさ
あれがジェフとエリーの
???ドゥーワディディディでも
あすこでマイナーにして、また戻して来る
ビーマイベイビーでもそう
達:ニューヨーク然とした
詠:あの小ネタなんだよ
長々やるとバリーマンなっちゃうから
複層的にもう一個やって階層作って戻して来るのが大作
のバリーマンなんだけど
ジェフとエリーは小ネタをサラッとやるのよ
あのサラッと感がなかなか良いね
達:実に意外なんだけど、ゴールドレコードの数という
点で言えば
バリーマンやキャロルキングよりも
バリーグリニッジの方が多いんですよ
詠:圧倒的にそうでしょ
達:No. 1は数はあれなんだけど
BMIのリスト見ると驚くほど
詠:遠藤実さんぽいね、馴染んだ曲が多いという
単純化を基本的にしたっていう所があるんじゃないですか
達:Hanky Pankyなんてバカみたいな曲
なんですけどやりたくなるんですよ
詠:ね!GSはみんなやってたよ
僕はそれでわらべ歌のような物だと感じて
ニューオーリンズのリードーシーの
イーニーマーニーミーニーモーとかさ
おまじないとか、日本の場合には数え唄とか
ああいう根源的な単純さみたいな物を
この人たちは根源に抱えてるから
ハンキーパンキーもダドゥロンロンもドゥーワディディディも
それを僕はお囃子ソングみたいな名称にしたんだけど
この単純化は簡単そうに見えてムズカシイッッ
作れっていわれても真似ごとにしかなんない
どっから来るんだ…

詠:それは遠藤さんの作り方みてると
からたち日記なんてさ
三拍子で始めてんのに途中二拍子1個入って
四拍子になって
インタヴューした時
あれ以上つっこまなかたけど
本人気づいてなかったんじゃないかって説があるんだよ
あの人乗り移って作るから
女性の場合でもその人のキーで歌うんだ
北島さんの時も高いキーの時は高いキーでやるんだって
そうじゃないと気分が出ない
情念で作る、巫女さん状態みたいな
達:シャーマニズム、そういう存在感してたでしょ
詠:してるの。してる
僕、お目にかかった事ないけど
目、けっこうやっぱり、すごいもん
詠:裸のまま存在しておられる
達:その時、船村さんと
詠:船村さんと星野哲郎さんと遠藤さんお三方
当たり前に言ってるけど小林信彦さんが言うには
異種格闘技
あの時は小林旭の特集だったから半分くらいなんだけど
小林旭以外の事も山のように聞いた
秘蔵マル秘テープあるんですよ、家に
あの後の話、こまっちゃうなの話とかね
達:あの人はコミックソングの範疇に入るような
すれすれの所があるじゃないですか
一体あの根拠はどこにあるのか
太陽に抱かれたいとか
詠:一言で言うと真面目に考えてる
達:あれふざけて出来ない
詠:布やんチックなんだ
達:本人は大真面目なのに、それがギャグになってしまう
詠:シュガーの最後なんて「あれ何?
どこがウルマンジャックだ」
達:ジョニー広瀬の太陽に抱かれたい
だ、か、れ、た、い
伺ってみたいけど、何であのキー設定なのか
ぜんぜん分かんない
詠:キー設定にあの人のアレがあるんだよ
前にも言ったけか
熱き心にをすごく評価してもらったんだけど
ふつう初対面でキーのこと言わないじゃない
うーん、キー1音たかくても良かったんじゃないって
一番良い時の旭さんを作ってるから
自分の以前のあれでは低いと思ったんだね
達:自分のヴァーチャルな物がある
詠:あるんだよ
俺自体デモで歌うと1音たかいのに
さらにまた
何故あのキー設定か、あるんだよ
おそらく確実な根拠があるんだよ

達:僕なんかのそういう
洋楽で育って向こうの音楽聴いてあれした構造と
全く違うなんかがある
詠:全くだね。OSが違ってる
そう、OSが違う
だからね、OSが違うものは勝負しちゃダメよ
達:いやいや、だから
詠:いや、あんたに言ってんじゃなくて
俺に言ってんの
なあんだ、OSが違うのか
達:大瀧さん、いわゆる船村さんとか遠藤さんの
作曲技法とか
そういうのに憧れた事あるんですか
詠:ないよ
達:ないでしょ
詠:作曲技法とかは直接的な物は一切ないんだけれども
前にも言ったように
人間、影響下に無い事ってないからね
耳から入って来た物には
何かしら影響されてるはずだから
あれだけさ、王将から何からヒット曲が
山のようにあるわけでしょ
入ってるはずなんだよ
だから評価とともに感謝の意味を
込めてありがとうございましたと
人間として同業界人として
ひとこと申し上げたかっただけで
直接的に楽曲がどうのってことはないです
達:大瀧さんもやっぱりシンガーなんで
今ヴォーカルオリエンテッドの時代だけど
日本ってやっぱり歌唱の分野が厳然としてあって
歌手でシンガーソングライターで
自分の曲は自分で作ってやってきた人にとっては
あの、何つったらいいかな
シンガーとしての自分と曲を作る自分と
いろいろ中で分裂してる
ものがあるじゃないですか
基本的に大瀧さんもレコードを作る時には
ヒットソングを聴いて育って来てるから
どっかの形でヒットパターンや
ヒットミュージックとかを絶対意識する
じゃないですか
詠:無意識でも必ず
達:それは逆説的な意味だとしても、絶対それを
全く度外視して作った事は一度もないでしょ
詠:ないです。ありえない
「作った」とそいつが言ったとしても、それは嘘
達:そういうところで遠藤さんとか船村さんの
ヒットメイカーとしての空気っていうのかな
上手く言えないけど
さっきのシャーマニズムの直感でもいいけど
僕がさっき聞いたのは
そういう音楽的な事じゃない物を、に、、で、、
興味はあったでしょ
詠:あったよ。直接会ってみたい
根源的に、OSの違いを感じた
時代とかじゃなく
特に船村さんとか遠藤さんていう人は
特別、人間が作ってる感じがするね
で、古賀さん服部さん吉田正さんの辺りまでは
人間も当然あるけれども総合力があって
ある程度技術的な事もあるんだけれども
達:譜面が見えてる
詠:もちろん船村さんは東洋音楽学校
遠藤さんも音楽的な素養は当然あるけれど
それを見せない、か、いや、それよりも人間力が
もう凌駕してる
吉田さんは知らないけど、古賀さん服部さんはナガシ
の経験が無いわけで
遠藤さんと船村さんは流しをやってた
達:クラブ・ミュージックとストリート・ミュージック
の違いなのかな
詠:そこのね、やっぱり直接目の前で歌って相手の反応を
見てきたっていうような人が
持つところの曲作りっていうのかなあ
達:面白いな。そうすると下北のストリートの
あのフォークがうまくすればその平野まで行ける
可能性もあるわけで
詠:客が良けりゃね
達:ああなるほどね、そうだな
飲み屋の客は歌わかってるからな
結構うるさいからね
詠:いろいろ聴いてるから
今のストリートの人はほら、TV出るまで
応援してやろうとか、そういうのがあると
一発で終わっちゃうかもしれない
飲み屋の客の一言が効いたとか
よくあるじゃない
北島さんなんかもいまだに残ってるのも、ああいう
艱難辛苦が
涙を流してとか苦労談ではないところのものを感じましたね
それをジェフとエリーにも感じるんだよね
達:大道という物はまさにストリートカルチャーなんだな

達:OSの違いっていうのは本当にその通り
通底する物は同じでね
詠:我々はウィンドウズなりマックなり
こっちのアメリカンポップスのOSで育って来たので
それ以外のLinuxを動かしたりする時に基本は同じだと
言われてもすぐに同じようには動かせないわけ
達:たしかに。おんなじチップ使っても違う
詠:そうなんだよね
達:我々は、あえて我々と言いますけど
戦後の戦争に負けたアメリカンカルチャーに首まで
どっぷり浸かってね
詠:いやその、服部さんなんかともし会ってたら
OSが同じだから、戦前の人
達:なるほど、ジャズです
詠:むしろ戦後より戦前の方がもっとさらにアメリカに
対する憧れはもの凄く強いものだったんじゃないか
って気がする
達:だとしたら、服部さんは大瀧さんと同じような
きっとカルチャーギャップが
あるはずですね
詠:村雨まさをの買物ブギなんてナイアガラムーンのような
ものがありますからね
達:日本の何百年の伝統的な物がどっかで分断されて
ジャズが上に乗っかってる、まさに普動説みたいな話に
なってくるけど
服部さんに伺ったらどういう事おっしゃるでしょうね
詠:ね
達:聞いてみたいですね

映画もそうで、成瀬の1936〜37年の「君と行く路」「女人哀愁」
「雪崩」「禍福」この4本を観ると、50年代の代表作との雰囲気の
違いに目を疑います。


詠:古賀さんですらイタリアンOSだからね
全部ではないけど、戦前の人はどっか洋楽ですよね
それに比べると遠藤さんや船村さんは土地に根ざしてる
というか、地面に近い
達:土着。どういう原理でそれが出て来たんでしょうね
戦前にそういう事やった人はやっぱり浪曲とかのレベルなんで
しょうかね

で、成瀬のさっきの作品群の直前に撮ったのが「桃中軒
雲右衛門」で直後に撮ったのが「鶴八鶴次郎」という浪曲と
新内・浄瑠璃の話、振り子じかけなんですね。


詠:日本のOSで行くならね
作曲の技術が無かったから野口雨情は唸ったんでしょう
中山晋平は作ってない
俺は河原の枯れすすきと詞を書く時に
野口雨情が絞り出すように詞を言ったんだが
だいたいあんなメロディだった
茨城地方に祭り歌があってそれが野口雨情の体を通じて出た
それを中山晋平が採譜しただけなんだ
達:あれは非常に歌いやすい曲でもあるんですよ
詠:だから素人が絞り出したメロディはやっぱり耳に憶えやすい
たくさんは作れないんだけど1曲は名曲が作れる
達:風呂場の鼻歌で時々でる
詠:それが理想郷だから毎回なんか鼻歌がフッと出ないかなと
思ってた時期ありますよ、私
意図的にやるとどうもダメだから

達:ハッと気がつくと作るために作ってたのがあるけど
今さら戻れないしね、OS変えれないから
詠:おっしゃる通り
さっきも言ったように、無視しましたっていう自体がそれの
影響下にあること以外の何ものでもない
達:意識してる証拠
詠:自分のOSがこうで、相手のOSがこうだった、の確認だった
お三方とのインタヴューは
自分のOSは分母分子論でやってるから
あえてそれは秘して
全部むこうのOSの上でどこまで僕は
語れるんだろうかっていうことなんだけど
普通アメリカンOSが乗っかった人は
ジャパニーズOSについてなかなか語らないし
対比によって語るという術しかない
達:比較文化論
詠:でも、あれを分かるにはどっぷりジャパニーズOSの中に
入って。やっぱりおのれのOSを敷いて
達:多分に集合論的ですからね
詠:その上で理解しないと理解にならないので
飛び込んで行くしかないと、虎穴に入らずんばという
ことだったんですよ
達:35年前から同じ事おっしゃってました

詠:ポップス伝の時にジェフとエリーとバリーマン、
キャロルキングの
三位一体を代表例として3つに分けて
歌謡、浪曲なり伝統芸能に近いのはバリーマンで
唱歌や学校で教える物はキャロルキングに近くて
ジェフとエリーは童謡的な物で
資質は自分にいちばん合っていて
このジャンルの人は、日本ではヒット曲が
書けない事になってるんだ
って思ったのさ
だからレッツオンドアゲンで終わろうと
した時に
やっぱりそうだったんだな
文化と戦ったところで勝ち目はないなと
思ったっすよね
達:ぼく個人的に大瀧詠一さんを40年近く見てますけど
大瀧さんは意外とヒットパターンのメロディなんだ
と思いますけどね
詠:それで産湯浸かってるから、あえてヒットパターンを
と思わずとも
それしか出て来ないですよ
それしかないんですよ、根底に
達:ひょっとしたら、アメリカの音楽が無くて
浪曲とかしか周りに無かったら
ひょっとすると船村さんみたいになってたかも
しれない
詠:布谷さんになってたんじゃない
布谷さんから離れられないのは
きっと同種の物を見るからじゃないか
達:悪い言い方だけど非論理的な物に憧れる
詠:ロイオービソンのOnly the Lonelyの途中、突然、ユ〜ガ〜
達:あの人もしかし非論理的な音楽
考えようによっちゃアメリカの遠藤実
Cryingの唐突な、Running Scared
なんでこう終わる
詠:to meで終わるでしょ
あれミノルフォンだよね
達:ですよね
あれ全米1位ですね
詠:日本でぜんぜん受けないよ
あの盛り上がって終わるの変だよ
達:あれの根拠がぜんぜん
詠:おそらくああだったんだね
象は鼻が長い、とかそういう種類の物なんだ
達:こうしたかったんですね
詠:ああ行ったけどああ出た
こう出たんだからこうなるしかないだろう
達:自分の詞だったらそれもあるかもしれないけど、
百歩ゆずって。人の詞でしょ
詠:イタコするんだ、遠藤実と同じように
入ってる時は巫女さん状態
達:ひょっとして詞先かな
詠:詞先じゃない、あれ曲先だったら
最後to meはないでしょ、端から
あれメロ先だったら凄いよ
達:凄いですね
詠:凄いね。大作曲家だ

達:桑田君に詞先でしょって聞いたら
僕は曲100%だって、ほおッと思って
詠:同時じゃないのかしら
達:いや、後から詞つくるんだって
詠:言葉の達人だね
そう思えないもんね
あの人も遠藤実的に思えるよ
達:ぜったい詞先って疑わなかった
ああ行きたいんだね
詠:情念の人、どうしたってこっち行きたいんだ!ってメロディ
じゃん。だから日本民族には一番受けると
達:理詰めは駄目なんだ
詠:一瞬、メジャー7は良さげに見えるけど理詰めは長く持たない

達:バリーグリニッジに戻りますけどね
特集しようと思ってね、1月に大瀧さんにこれを伺って
これで聴くと350倍楽しめる!
詠:なんだいそれ

http://www.circustown.net/cgi-bin/radio/ssb.cgi?CT=2009.05.03

3週目のシフォンズとレスリーゴアのあの曲とあの曲・・・




このThe Kind Of Girl You Can't Forget 
1969年のドラッグレースのディルディルディルラ!はコレですね。


達:良いんですよね
詠:なんだか知らないけど、この単純的なものが
飽きないんだよな
CFGとかさワンコードは、どうしても語りが乗っかるから
英語が母国語じゃない人は
退屈なんだよね
ワンコード・ブルースとかやられても意味わかんないきゃ
どっか行けよって言いたくなる
Hanky Panky、レインドロップスにしても良く
出来てるんだよ
達:ベイビーアイラヴユーなんか単なるCHGの曲です
からね
詠:あれだけなのにこんなメロディックに出来るんだろう
って
それこそ今思い出したけど
君は天然色でCFGのサビを日本でよくやったって
山下君に褒められたけど
A面で恋をしてをCFGの。あれがジェフとエリーなんだよね
それでもう終わりだよ
あれ以上出来ない、どこまで頑張っても
A面がいちばん体質的にジャストフィットだったな
ああいうのはもう出来なんだな
ジェフとエリーは難しいよ
達:詞、曲、演奏、歌唱、編曲いろんなファクターが
混沌とカオスのようになって
単純なコード進行のメロディーが下支えの演奏に
よって何百倍にも生きて
それがまた、詞と曲が演奏に与える循環とういうか
詠:おっしゃる通り
ただギターとかピアノだけのCFGの歌はもっのすごく
つまんない
複合的な良さなんだよね

達郎さんが、夏の陽のコーダでヘロンを、ある時は天然色のサビを
ひと節入れた主旨が、このクダリでよく理解できました。


達:しかしよくスペクターはこのコンビを最大限に登用して
詠:一番ヒット曲を書くやつだと思ったんじゃないのかな
達:大瀧さんはAll Things Must Passとおっしゃったけど
僕が自覚的に聴くようになって一番インパクトあったのはジョン
レノンのファースト
あのノーエコーでドラムとベースとピアノ1台の、こういうの
ちゃんと出来るんだ
決してあのエコーだらけの人じゃない
素晴らしいプロデュース能力だと思う
詠:後にハードロックのラモーンズのそんなechoeyじゃなく
ただ喧しいだけっていうダイレクトサウンドみたいな物も好きな人
だった
達:やっぱりレノンとかジョージハリスンだとちゃんとハモる
詠:名人は名人を知る
達:ジョンレノンの作品は押し並べて良い
詠:ポールマッカートニーとは合わない
達:不思議ですね
詠:そこがジョンとポールの資質なんじゃない
スペクターを入れた時にジョンは合うけど
ポールは合わないのが資質の違いなんじゃないですか

詠:つくづく思ったのはロンバケは中学生のとき聴いてた物を
イーチタイムは高校生の時のサウンドをやったんです
で、つぎ考えてみたらはっぴいえんどなんです、バッファローに
なってるから
順番としてロンバケ聴いてイーチタイム聴いて
はっぴいえんど聴くのが自分の音楽遍歴
この順番が実は自分の音楽史なんです
って、さっき気がづいた
当たり前のようで、初めて言ったんじゃないかな

詠:いやでも、よくやってるね、作家の特集を
今どきいないでしょ
達:大瀧さんの後塵を拝して
詠:頼みますよ

達:あと、面白い話があったんですよ
ブロンディー
詠:コールミーのブロンディー?
達:デビュー時の最初のデモは
Out in the Streetだったんです
グリニッジはあまり好みじゃなかったんだけど
ファーストアルバム参加してコーラスやったり
曲も提供したらしい
それは特集やらしていただく時に
詠:心して聞かせてもらいます
Out in the Streetは外人が好きそうだね
達:シャングリラスはイギリスではカルトですもんね
詠:ファッションも含めてね
イギリスっぽいよね、ロンドンぽいっていうか
達:あれ、モッズとかにすっごい影響与えてます
音の大仰なシャドーモートンの作り方も
詠:イギリスっぽいね、たしかにハードロックっぽい感じが
達:やっぱりヴァニラファッジに行く大袈裟さ
詠:歌舞伎の大見得みたいな奴
カリカチュアが良いんだ。さりげないのはダメだね
達:日本でも受けるじゃないですか
詠:いっぱいいるじゃない
空耳アワーの安斉さんがヘヴィーロックなんだよね
達:大瀧さん、ハードロックは興味なかったんですか
詠:デイヴクラークのAny Way You Want Itもハードロック
じゃない、もう。良い再生装置で聴けばね
達:でも圧倒的に歌音楽でしょ
インストはそんなに
詠:まあシャドーズ、ヴェンチャーズ、普通
達:ジャズは
詠:あんまり聴いてないな
達:やっぱり完全に歌もの
例えばシャンソンとかカンツォーネは
詠:時代で流れてるんだもん
達:誰かお好み
ほれラーララー
誰だっけか

マジョリーノエルか。

詠:とにかくカテリーナバレンテから始まってるんだから
我々のポップスはザピーナツがカヴァーしたところの
ジュリオーナチンクエッタ
ボビーソロ
あれはほんとに流行ってたもの
ラテンはVolareから
アメリカで1位ですからね
アメリカ人、どういう意味か分かんないっつって
分からずヒットしたんだから
上を向いて歩こうがヒットする
可能性あるんだよね
達:そんなに歌詞への執着ないんですね
Do Wah Diddy Diddyで1位になるし
達:日本の場合はそれじゃ
詠:情緒が無いとね
達:どっか濡れてないと
詠:湿度が無いとダメだ
いくら新しく人間が変わっていても、この情緒は無くなるもの
じゃない。べつに悪い物じゃないし
また情緒に浸ってる時の安堵感ていうのは何とも言えないんだ
達:それを人に気取られる事が音楽家の外ヅラを悪くするという
幻想があるので「そういうのは聴かない」と
詠:そんなもんは外国では取り上げられないって
いいんだよ、大きなお世話だよ
いちいち外国では…知らないっての
良いって聴いてんだから、たかが音楽じゃないか
達:だんだん調子が出てきました
詠:なんだよそれ
えーと、バリーグリニッジはそんなもんかな、良い感じですね
詠:ジャックケラーはちゃんとやってください
達:やります。集めてますから
詠:けっこう意外な物があるんだよね
みんな小品なんだよ。これといって大作は1個も無い
達:B面が多い
詠:B面が多い、B面ズキなんだよ

達:そういうソングライターは始めから見てました?
詠:ほらエルヴィスをやってたから
達:ああそうか
エルヴィスはソングライターの宝庫ですもんね
詠:エルヴィスのリストを作ったのが僕の人生における、晴海で
シングル盤買った前かな
達:エルヴィス聴いてる人でそんな事やってる人いなかったでしょ
詠:いなかったんじゃない、
たまたま全部そろったんですよ
達:僕、同じことヴェンチャーズだったんです
詠:なるほどね、宝庫だからね
ジャッキーデシャノンから
達:キャロルキングもあるし
映画音楽は詳しくなったし
詠:全部カヴァーしてた、山のように出てたからね
そういうのが大きい
僕もリヴァプールで再評価した
ジェフとエリーの名前が出て来た
達:エルヴィスはレコード一所懸命買われたんですか
詠:買いましたよ
62年の夏から高校終わるまで
63年暮れ、リヴァプールが出て来たんで
人に任せた、エルヴィス好きに
達:ニューシングル出るたびに?
詠:シングルは全部買ってます
歌えますよ、いまだに
達:大きいですね
詠:Kissin' CousinsのB面It Hurts Meとか
達:エルヴィス友達っています?
詠:一人だけいたのよ
達:いや今
詠:誰だろうか。健太ぐらいかね
友達って言うのもなんだけど
達:同世代の人いないんですか
死ぬほどいそうな感じが
詠:上になっちゃう
達:湯川さん
詠:ミッキーさんとか内田裕也さんとかの世代の人たち
なんじゃないかな
エルヴィス命の人って湯川さんぐらいしか
聞いた事ないけど
達:木崎さんは
詠:木イサマはビーチボーイズと竹内まりやに
なるんじゃない
達:木崎さんのディオンのリストがあるんですけど
音が無いのが後4曲
僕たまたま有ったんで1枚進呈したんだけど
あと2枚でコンプリート
詠:ディオンは良いよ、木崎さん解説だったんだよ
なんたってダイオンて書いてたんだからね
言っちゃ悪いけど
素敵なドンナのB面がGo Away Little Girlだったんだ
キャロルキングはGo Away Little Girlで
好きになったんだよねー
いまだにあれが一番だな、キャロルキング



達:それがキャロルキングだっていう自覚のはどっから?
詠:Loco-Motionじゃない
とにかく作家は必ず見たよ
エルヴィスの買ったシングルは全部
達:最初に意識した作家って誰です?
詠:リーバーストラーですよ。間違いなく
達:当然ですね
詠:ポーマスシューマン、アーロンシュローダー
達:王道ですね
詠:フレッドワイズベンワイズマン
64年過ぎてからジョーバイヤース
誰も知らねーなー、まあいいや

達:どうして、同好の士がラジオで増えないんでしょうね
詠:ゴーゴーナイアガラの時、普通に
話してたよね
達:けっきょく誰か増えるかと思いきや
まったく仲間が増えない
詠:何のあれにもならなかったけど
でも山下君の中でこういうふうに伝統が
どんな伝統かわからないけど
やっていただいて
達:ただ後塵を拝して
実に大瀧さんのゴーゴーナイアガラ以来
30うん年ぶりに
バリーグリニッジ特集をやらせていただく
詠:世界中にいないよね
達:意外とバリーグリニッジは楽に集まる
エリーグリニッジだけだったら
ジェフバリーだともうね、死んじゃうけど
詠:広がり過ぎて
達:だけど、ジャックケラーは大変
詠:大変だねー
何があんのかも僕も全貌つかんでないし
聴いてない曲があるし
達:ひとそろい揃ったらDVDかなんかにデータ入れて
あれしますから
詠:今どきジャックケラーって言う人もいないよなあ
達:だってヘレンミラーは3週もやって
「大丈夫か」って言われましたもんね
詠:ヘレンミラーってFoolish Little Girlと
あと、何だっけバーバラルイスになんかが
それぐらいだったんだよね。せいぜい僕の時代は
達:僕の時代なんて名前すら知りません
グレンミラーの奥さんてヘレンミラーつうんですよ
で、ヘレンミラーって実はひと世代上なんですよ
マンウェイルとかキャロルキングより
40年代からやっててレイブンズとかオリオールズに
曲書いてる
その人かと思ってたら、それがこのヘレンミラーだった
10年ぐらい結婚生活で引退してて
60年代にアルドンに引っ張られて
だからちょっと曲想ちがうじゃないですか
詠:違うね。変わってる
達:80年代にもう引退して全く書かなくなった
2002年に亡くなったそうです
詠:己を知ってるね

詠:いやでもね、またその名前を聞くと
思わなかったし
放送でそういう名前を連呼するとは
思わなかったね
達:大瀧さんラジオ、始める始めるって
おっしゃってたから
詠:この手の物はもうやらないですよ
だから、元の水にあらずって言ったでしょー
船村、遠藤、星野のあれも終わってるから
また同じような事はやらないんですよ
同じなんだけど全く同じじゃないんです
達:だとすると…
詠:読もうとするとハズレるからよしなよ
僕はもうあの時代で役目を終えてる
それは山下君やってくださいよ
達:受け継ぎます




達:これだけしか趣味が無いんです
レコード集めしか
詠:レコード趣味の人もそろそろ稀有な存在ですよ
達:2000年ぐらいにアナログ無くなるなと思って
意外とあるんです。北欧あたりで90年代バブルの時に
アメリカのシングル買ったのが今ダメで、けっこう出て来た
詠:円高だからじゃんじゃん買えるね
達:ほんッとに安い、うれしい!
詠:オーディオも直で買うのが安いよ
達:韓国いくとさらに安い
詠:まあマイナス面だけ捉えないで、プラス面も考えながら
人生を
達:内需拡大
詠:誰かが意図してるように暗いニュースを流して
石油危機の時みたいに
達:ブームでしょ、不況ブーム
みんな同じ事いうと安心して
こういう時にバブリーな事やると不謹慎だと
スタインベックじゃないけど
明るい事もあるんだ
詠:じっとしてりゃね、何年か経つと
タイ米騒動のように
援助してもらって不味いって言ってたんだよ、
この国民。ひどい奴らだね

達:大瀧さん、本当に還暦お迎えになったけど
お元気そうで、体丈夫なのが何よりです
詠:ずっと定点観測であなたみたいに
見て、眼鏡つくった方がいいよとか
公私ともども言ってくれる人が居てくれる
っていうのはありがたいっすよ
なかなか定期的に会うってことないですよ
達:同業の場合はそう簡単には、歳とってくると特に、なんか
ほんとに時事放談くさくなってきましたね
詠:オバマ利得ってくらいだからね
アメリカ行ったら今ブームじゃないか
達:あの人たち幾つだったんでしょうね
詠:けっこう若かったんじゃない
達:ですよね、じゃなきゃあんな
ヤッパッリネエ、声でない
詠:似てるんだ。新春放談で6回目ぐらいだけど、
良いネタなんだな、これが

詠:あの頃の歳なってんじゃないの
越えてんじゃない、俺たち
達:ひょっとしたら
詠:ねッ
なんだよ!じゃ今の若い人たち
小汀利得と細川隆元のように見えてんだ
達:のように聞いてんだ
詠:すごいジジイだと思ってたけど
だって時事放談、25年続いてませんからね
詠:ジジ放談ってくらいだからね

二人の時事放談は1957年から。その年、小汀68歳、細川57歳。
終了は1970。その年、小汀81歳、細川70歳です。


詠:老人と子供のポルカって小汀利得が歌う予定だったん
だってね
達:死んじゃったんで卜全さんになった
詠:すごい邂逅だよね、巡り合わせ
達:なんで小汀さんに歌わせようと
詠:小汀利得じゃヒットしないよ
初見きくんだから卜全さん
左卜全のキャリアの中で最後を飾ったわけでしょ
ルイアームストロングのHello Dollyと張るよね
左卜全は帝劇のなん期生、コロッケの歌の前史がある
初見きくんだ、本格なんだよ
黛敏郎がカメオで出た西河克己の映画があって
言ったっけか
達:聞きました
詠:あすこでピアノ弾いてる
達:役者さんって侮れない
このあいだ松たか子さんにコーラス頼んだんですけど
バッチリだもん初見
あとは天海祐希さん。みんな読譜力が
譜面パッと渡して、ハイハイって。もう怖ろしイッ
詠:宝塚の初期の人はピアノもがっちり弾くしね
基本が出来てるから
宝塚あがりの人はちょっと踊るシーンがあると
立ち姿がきれいなんだよね
達:まったくね。こっちはサブカルチャーだから
詠:僕はOther 、その他カルチャーだから
言っとくけど、メインでもサブでもないよ







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