新春放談クロニクル番外編
大瀧詠一的 2009 今年2019年は成瀬巳喜男の没後50年で作品をまとめて観るチャンス が出来ました。いろんな手段で40本ぐらい観られました。 東京へのロケ地探訪にも2年ぶりに出かけました。 これらの画像はオリジナルです。 わたしのロケ地巡りの参考書にさせていただいたHP 管理人さんも石田勝心監督と親交があり、監督と大瀧さんとの対面に ついて記述されてます。 なんで、アノ大瀧詠一が映画の取材をしているのか… http://www5c.biglobe.ne.jp/~nuage001/photo34akitachinu2.htm 詠: まだ3年目か 平:今年は初仕事じゃないですね 詠:大貫妙子さんの番組に 税務調査 茂木さんは申告しない 2ちゃんねるヒロユキは裁判に行かない 詠:友もいない、話し相手がいない かくかくしかじかから始まって 長く持たせる話芸は誰でもできるってもんじゃない 石:税務署の人が「参った」って 詠:「次がありますから」 ![]() 内:gpsを車に3個積んでいらっしゃる 平:第2回の時に築地の写真を見せてくれて 詠:たまたまあのとき見つけたんだよね 平:そういうのが今年になって全部繋がった 大瀧さんとgpsがうまくピースがはまんなかった 詠:僕は聞かれたことにしか答えないからね 平:先月、東京人を見てびっくりしたわけですよ しかも今日の録音は築地で 詠:この辺よく歩きましたよ 銀座化粧は築地は多いんです 秋立ちぬは築地は映んないんです 旧木挽町、新富町の一部と 新富町は築地の隣 内:晴海埠頭はこの先 今何があるところですか まだあんな感じであるんですか 詠:埠頭の前には行けないけどね 平:大瀧さん、目つぶっててももう分かるでしょ 詠:だいたいね 平:しらみつぶしに歩いた? 内:全部 平:路地という路地を全部 詠:歩くだけは歩きました 平:あれは全部でしょう 内:半径3キロ四方 石:もっと 詠:あれを歩くミニツアーを企画してるんですよ 僕がガイドで、3回やりましたけど 全部やると3時間かかります 端折って2時間 この3年の間に 平:そもそもあのフィールドワークを始められたのは3年ぐらい 詠: 1977年の3月、歩き出したのは 内: 77年? 詠: 77年の1月、僕のきっかけ CMスペシャルの20周年をマスタリングしたって所から 2007年のはずです。 詠:音響ハウスの目の前に三吉橋という橋があったんだけれども 30年通っていたにもかかわらず 三吉橋を三吉橋だと見たことがなかったんですよ 内:映画を観てこの橋だって思ったんですか? 詠:そうそうそう 平:三叉の面白い橋ですね 詠:ハブ橋です、hub空港が今ちょっとあれになってるけど 平:前からやりたいと思ってたんですか 詠:たまたまですよ 平:たまたまやったら… 詠:こんな風になっちゃった 平:しらみつぶしに、全カットですよね ぜんぶ踏破して、空間的に踏破するだけじゃなくて 時間的にも遡ったりして 立体的にも 何から何まで解剖し尽くして これは成瀬さん生きてたら 詠:呆れたんじゃないですかね!「え、そうなの」 植木さんと話しても あ、そうっていうことが多い 僕も逆の立場になって時々あるんですよ 「君の方が詳しい」 平:それが月刊東京人に出て 詠:出すつもりはなかったんですよ だって3年前にそういう事をやろうと思って始めるわけないでしょう 平:あれを最初に読んだ時に この裏には相当なフィールドノートがあるはずだ それを見たいなあ ちょっと気になった事がありまして 普通の人はやらないと思う、ここまでは この仕事にはどっかにヘソがあるはずだ つまりここまで駆り立てる物は一体なんなんだ 解りましたよ 詠:解ったの 石:え、なんですか 平: 2枚の写真ですよ ![]() 平:右バッターと左バッター 詠:ああ、それ内田先生が最初に僕に言った この人は分からなくてもなにがしかの見解を出す人なんです 薬缶の語源を聞きに行った大家さんのような 1年前に原本を見てもらって 開口一番、「あの秀男少年は僕と同い年だ」と 正しいんですよ 昭和35年に小学6年生だった 平:ほんとにシンメトリーに鏡うつしですよね 詠:着ているものとか時代の雰囲気… 平:ああそうかと思いまして 内:あとは母一人子一人 平:そういうのがたくさんあって 詠:でも、だから始めたんじゃないですよ 平:無意識の内にやっぱり 詠:無意識まで、オ!今日は無意識がこう言ってるって動く人なんかいない 平:すごい可愛いでしょ 成瀬の子供は 詠:戦後の子供は8割がた可愛くなけりゃ生きていけなかったじゃない 内:生存戦略だったんだ 詠:だって親に協力的じゃなきゃ まして母一人子一人の場合は そこで反抗してしまったら家庭が成り立たないから 子供の方が親よりも 思ったりするのが戦後の子供だった 詠:あの乙羽信子はまだ若いんです 子供を置いて駆け落ちするのは断腸の思いなんだろうけど 小学校6年というのがキーポイントで 小学校2、3年だとしたら、ああはならないのさ 他人の家に預けられる体験が 戦後によくあった事 石:親戚の家に同居させるのがあって それが物語を作って行く 詠:預けられた時の奥さんの冷ややかな視線ていうのが 僕は体験がすごくある 大人になってみると賀原夏子の気持ちもわかる 平:養子にやるというのもあった おかあさんという映画にあるでしょ 詠:家の制度が崩壊したことに 外で作った子を入れるとか 家の制度を守る事が生存のなにがしの理由だと 平:映画を観てロケ地を歩くというのは 川本三郎の独壇場だと思ってたんだけど 驚かれたんじゃないですか 詠:川本三郎さんが創始者 川本さんは全部やらなきゃいけないし 最近は地方をやってるから 平:地方も、銀山温泉とか 詠:行ってますよ、行きましたよもちろん 別枠でもう90年代にやってるんです 銀座化粧と秋立ちぬに関して 君がこれを全部解明してくれ 勝手に頼まれたとものだと想定して フィルスペクターも頼まなかったけどね 「ステレオのスペクターサウンドを作ってくれ」 頼まれてないんだけど そう思い込んで始めたっていうのもあるんですよ 漫画は全紙 プロ野球は12球団 詠:東京人で東京球場が映る映画があると 大毎が坂井と阪急が梶本だって判った 俺もたいしたもんだ 平:百科全書派に匹敵する仕事 詠:なっちゃうんだよ 何かやるそうなってしまうんだよ 石:大瀧さんみたいな人はいない 平:もっと狭ければいるんだけど 映画から東京の歴史まで全部 詠:築地と新富町だけだと思っていたら 2箇所、エリア外の橋を見つけて それは絶対、川本さんにお伝えしなければと思って こちらからアプローチしたんですよ まさか築地の話に中洲と箱崎が出てくるとは思わなかった それが分かるの2年半かかった 箱崎とか中洲とかやる時には 蛎殻町の箱崎川の、小名木川を掘って塩を取りに行く 行徳河岸も研究しなきゃいけない きのう犯人が行徳警察に そういう事を研究してないと、行徳と行徳が結びつかないんだけど 行徳警察で塩の事を思ってしまうこの私 うんちくとかそういうんじゃないんだよ 調べてるうちにだんだんそうなる 平:清洲橋は川本さんが佐藤春夫にずいぶん思入れが 詠:大正幻影 申し訳ない、会ってから後で読んだの 川本さんが「そうか箱崎かあ」って言ってた理由が 後で分かった ![]() ![]() 小名木川から清洲橋 采女橋 平:銀座化粧のもう一つのストーリーは築地川 詠:築地川と三十間堀は同時に埋められた 水は流れてないだけど部分的にはあるんです 高速道路になってる、川底を走ってる 平:だから新富町の下は変な匂いがする 詠:窓を開けて走ってないからなあ 平:今でもメタンのようなガスが絶対出てます 詠:橋は当時と同じなんです 新橋演舞場の手前の采女橋は以前と完璧に同じで感動します あそこにボートの発着場があったようで映画でたくさんボートに乗ってる ボートに乗っている目線に立つために 用もないのにあそこを通るって事をよくやるんです 平:三十間堀の三原橋の下の地下街がありましたよね 詠:映像資料いっぱいありますよ、映画館がある所 シンメトリックに東と西に 晴海通りに電車が走ってたので埋めなかったという説です 東京初の地下街なんでしょ 三十間というと昭和通りより広い 平:昭和通りは二十四間 詠:ね 平川さんも凄い。 内:昭和通りは何川? 詠:あそこは土地、大震災以後広げた 空襲はあるけど前に関東大震災があってガラリと変わった いま取り壊されてるのほとんど昭和初期の建物 三信ビルとかみんな震災復興で建てられた いま話してるすぐそばに明石小学校が来年取り壊される 震災復興小学校、鉄砲洲小学校も 後藤新平が学校を建てたんですよ これからは子供だ、国の宝という事で教育に 隣に必ず公園があって すごくガッチリ作ってますよ、昭和の初期でシャワー室があった っていうんだからね、すごいですよ 内:建物で大きな災害の後に作ったのがすごく良い 大阪の方だと世界恐慌の1930年から2、3年後に作ったのが 良いんだって 詠:おそらく災害になったりすると 人間はzero-sumになる 願いましてーはバラバラバラと人間の心が0に戻る ああいう時には正しい発想をする 内:一回、大破壊、大恐慌があってground zeroに戻った時 そこに作る物は経済効率に関係ない人間の本性に見合った 平:これからはちゃんとやろう 内:真っ当に生きようという勢いの 詠:全員が総論に参加しやすい 各論ばっかりじゃにっちもさっちも行かない 内:大阪の方も今みんな壊してる 詠:大阪ビル、大ビル 平:あれは良いビルなんですけどね 詠:だって三信ビルだって良かったんだ 内:なんで壊す 平:経済合理性にかなわない 壊して新しく建てた方が儲かるよ 詠:あとは耐震法、壊すための法律だったんじゃないかな 内:耐震性は昔の方が良い 詠:ニコライ堂なんかモってるしね 内:うちの学校はボールズという人が作った 20年前はボロいと資産価値ゼロだと評価されてた だけどその後、震災があってチェックしてみたら 土台のコンクリートが現行の基準法の3倍あった 法律に定められて造ってなくて 建築家の良心に基づいて造ってる 詠:三菱一号館が復元されたんですよ 明治時代の物に完全に 旧都庁の反対側 美術館でオープン、あそこだけグーッと低いですよ 三菱地所がやってるんですよ 東京駅も円形のドームに戻す、ステーションホテルも 戦後角形になった、空襲で焼けて 復元するって言うんで事前に見に行ったんですよ 工法を聞いて来た、以前のビルの作り方 内:なんで見に行けるんですか! 蛇の道は蛇でいるんだよね 平:犯人は現場に現れる 内:大瀧さんに見てもらおうという人が必ずいるわけで 石:アーカイブの意識がすごく低い NHKアーカイブなんて問題にならないくらい アメリカはすごい 詠:文化的意義のある仕事をやってる人を マニアという名前で置いておきたい みんなが持ってるのが面倒くさいので お前だけやってくれ 「君だけの特別の物にしておいてくれたまえ 他の連中がみんな真似をすると困るので」 こういう契約はいかがでしょうか そういう事を長い間ずーっとやってきた 平:取材の時は聞き込みをやってるじゃないですか、刑事みたいな 下から出てったと 相手はアノ、あの大滝詠一だと分からない 詠:アノって言って通じるのはここの1人か2人ぐらいなもんだ 普通に町に降りてって頼み込むわけですから横柄にはいけない 詠:木下商店、丸新青果、田毎そばの方に DVDを焼いて、スチール写真のプリントを持って行って 平:大学の先生か、市役所の地上げの調査かと思うんですかね 詠:お店なんかだと最初は 訝しげに見られるという事は当然のことだと思うんだけど 内:映画を撮影した事はご記憶になってるんですか 詠:田毎そばのご主人は 「田中絹代が来るって親父が騒いでた。遊びに行っちゃって その日は見てない」っておっしゃってました 内:セットは使ってないんですか 詠:メインの家はセットですよ それ以外はロケです 内:夏木陽介のバイクで虫捕りに行くのは 詠:多摩川ですよ 探した人がいたね、僕は行ってないけど 石:登戸と二子玉川の間ぐらい 詠:登戸に近い、あの辺、成瀬はよく行ってる 他にも登戸の映画がある ![]() 多摩水道橋と聞いて秋立ちぬを思ってしまうこの私 千歳船橋、向ケ丘遊園、鶴川など都道・県道3号線「世田谷町田線」 沿線が多いですね。また登戸から南下する県道9号線沿線も多いです。 砧からの地の利でしょうね。 石:俺ら泳いだよね 内:途中で校長先生が「多摩川で泳いではいけません」 詠: 50年代浜離宮から志村喬が飛び込んでたよ 内:東京暮色(早春か)で池部良と岸恵子が一夜を過ごして 窓を開けると前、海ですよね あれはどこ? 詠:大森か 内:泳げそうでしたね 幕末太陽伝の飛び込むシーンがあるじゃない 心中しておくれって 平:品川心中だろ 内:まだ飛び込めるんだよね 詠:あれは小沢昭一 平:川島雄三もそうとう… 成瀬の弟子ではないか 詠:もちろんぜんぜん違いますよ、違いますけど まあ似てる所は多いですよね 平:石井輝男か 詠:ああ、3本付いただけだけどね 最初、現代の風景が出る 詠:最後、撮影所を出る予定だったんだよね フランキーが土手走って、街へ出て行く 堀久作か江守清樹郎 、上層部に止められて実現しなかった メルブルックスのブレイジングサドルズの最後のような 川島が先駆としてやってたらね 内:冒頭もあれだから、当然最後も現代に、そういう風に額縁作んないと 石:グラマ島もそうですね、早送りで現代うつして 詠:そういうの得意ですね 00年代のずっと前から川島雄三が好きだった事が 分かってきました https://web.archive.org/web/20021009005640/http://www.fussa45.com/cinema/eiga. html 石:俺は「しとやかな獣」が最高、川島作品で 平:舞台劇みたいだよね 石:あれは演劇 アパートの部屋からカメラが動かない そこに人が来るという形で物語が進行させる 内:昔の映画監督の方が自由だね、実験的だね 今の監督がやろうとしても、お金出ない、企画通らないでしょう つまんないもんね日本映画 観てます? 詠:日航の映画みたよ 試写会で観たのはバックトゥザ・フューチャー 内:試写会はだめ、 詠:見本盤も 古川緑波作品集を出そうと 若い人、知らないでしょ 詠:ショーケン、ジュリー、キョンキョンだって分からないのに 戦前の人みたいな感じでしょ 僕もそうだと思うけど ロンバケfromレディーズの取材 トリビュートなんて死んだ人になってるのに する方が思いの丈を語るのなら分かるけど 何でされる方が出てって 1981にロンバケ出たけど 40年前は1941真珠湾なんだよ はっぴいえんどが40年、来年で それは戦前の人だと思われて当たり前 どうしてアノ、とか言うのか不思議でしょうがない アノって言われて、え?誰?って言われた身になってみろよ 内:女の子が歌うと良いですね こういう歌詞だったのか コンサートは途中からの企画 大滝詠一ロングバケーショントリビュートコンサート 詠:なのにも関わらず、僕の名前が一番上に大きく書いてあって みんな中抜きにするんだよね 平:行ってもじゃあ大瀧さんは出てこないの 詠:ちょっと待ってよ 世の中って九割九部こういう人だから これを説明しても意味がないし だから言わなくなるし、やらないのがいちばん楽だってなったのよ 一人ひとり応対してたらヒロユキじゃないけど体がいくつあっても 訴訟を全部やめたって、俺に似てるなあ ポップス伝の話も聞きたい 詠:一晩に1本、連日行った 1日目は夕方6時、翌日が8時、10時、12時、1時 だんだん遅くなって 不思議に50分で終わるのよ 一回もリハ無し ゴーゴーナイアガラで編集なしでやってたんで 内:女子アシスタントがへー、へー 詠: NHKは必ず置くんですよ、一人何にも知らない人を 一般の人にも分かるように 石:今度平川やったら? 平:へーって 詠:僕の番組は何年か経ってまた聞くと良いんですよ 自分が変化しているから新しく気づく 内:意識化に入ってその後の行動のパターンが変わる 仕込まれたものに操られるように いろんな物を享受して行く 何年か経って聞くと、これ知ってる、これ知ってる わたしの築地川研究も数年のブランクが断続的にあるんですが やはり、この座談会の内容もずいぶん分かるようになりました。 三橋美智也のコンピ 石川くんのスゴイ 内:講義で音楽との対話 春日八郎とニールヤングをやった お富さんとTill the morning comes 詠:違うと思うんだけど、同じに聴こえるだろうと思う Blue birdの間奏と どこかに中間に誰も発見していない原点がある 見つけた!って誰かが書く 荒城の月のメロディーは何とかだった、とか またそれにも原点があるのよ 先に行くと次のドアが開くんです、それ行けスマート だって歴史は長いんだもの 我々が知るのはほんの一部分で それでぜんぶ語ろうという態度が不遜だ 自分が今ごろ気がついた、でいいのさ まわりからなんだ今ごろって言われたりね 詠:銀座化粧の橋だけは誰も分からなかった 知りたい人には伝えたい使命感 平: 三島由紀夫の橋づくし 詠:築地川の7つの橋を渡って願をかける 成瀬の後なんです みんなで歩こう、フィールドワーク 詠:うちのメンバーは5人 年に4回ぐらいオフ会があって あの映画に出てくる看板で 例えば石川印刷が一年半分かんなかった みんなに石川印刷判ったよ! え!石川印刷判ったの?ってみんな言うんだよ その人たちの間では3年間楽しかった これを全部解明するまではとみんなが協力してくれた あと2つだけ判んない 50ある橋の、48まで判って 弁慶じゃないけど、後の二つどうしても欲しくなる っていうのが人情でしょう 石:ロケ地を歩く人が増えるんじゃないですか 詠:そう思って細かく書かなかった アンノン族のようになって 日常生活を暮らしてる妨げにならないように 平:大瀧さんが食べた武蔵小山の五目粥を食べるツアーがあるぐらい 「黄金餅」のコース、下谷から麻布 内:道順に意味がある 強い効果がある GPSが機能して自分がそこを歩いている気分になる 都市学者オギュスタン・ベルク 東京は9度傾いてる 時計回りに戻ろうとする力が働いている それをよく感じるのは 東京から西に向かう力 詠:北は鬼門だし東は海だしね 内:大山の向こうに富士山がある。西方浄土 今日は暇だから九十九里に行こうじゃなくて 横浜、湘南、伊豆 詠:逆に行こうとすると反作用の力を感じつつ行く 内:富士見坂、潮見坂 黄金餅も地図に書いてみたら この道筋が霊的に気分が良い 石:中沢新一さんのアースダイバー 詠:マイケルジャクソン出世太閤記で 由利徹が「にすへ行けー」 内:アメリカ人は完璧にgo west トクヴィル アメリカのデモクラシー 開拓民の行動が奇妙である 狂想的な情熱に駆られてに西へ向かう 太平洋岸、ハワイ、日本、朝鮮半島、ベトナム アフガニスタン、イラク 「橋づくし」も地脈が導く正しいルートに それを感じるかどうかがその人の運命に関わってくるよ 詠:西は行くで、北は帰る 歌謡曲ではね。戦中は南が多いね 内:犯罪者は南に 市橋が沖縄 アメリカはみんなメキシコ行く 詠:北帰行。北に故郷がある 戦前の革命家は北に逃げた 平:北のどこに帰るんですか、どこかにメルクマールがあるの? 詠:精神的な意味あいなんだよ 全部が無くなった時に残るのが北なんだよ 戦乱があると次の新政権に追われて北に逃げた 東北は民俗芸能の数が多い 歌舞音曲の人たちも北に逃げた 西に逃げると帰ってこられない 安全、北は一時身をやつしてまた戻れる 母なんだよね、懐に抱かれる意識なんだ 日本全土が焦土になって ほっとしたいと思った時は 国破れて山河ありの山河は北の山河なんだよ 青森のリンゴ園とかの風景を 内:青い山脈 りんごの唄 詠:分母分子論の分母の一番底に常に まったく意識してないんだけど ぜんぶ分子の浅いところが飛んだ時に 一番底辺のところに残ってるのが 東北の山河の景色なんだと思うのだよ 内:津軽かな 詠:具体的なそこって事じゃなく東北なんだよ そこが暖かく迎え入れてくれる どんな人をも 分母の根底にそれがあるのを意識できるか ぜんぶ灰に帰するってイメージをして ほっとしたいと思う時に流れてくるメロディーがある 全部を失った時に流れてほんわかするのが 古関裕而の「ひるのいこい」 あの人は会津の人 日本人のgod bless America Spirit of Japan それをあえて表面に出す事をしないのが日本人の良い所 僕、前にgod bless Americaのような 国のアレになるような曲を書いて欲しいと頼まれた事がある とある所から アメリカがああいう帽子を胸に god bless Americaのような物が一番似合わない国だと 思うんだよ、この国は ない方がいいよね みんなが忘れ去っている物で 初めて聴いて懐かしい ぜんぶ失った時にそのメロディーがふうっと来て 心の底にジンとくる 僕の北端は古関裕而の「ひるのいこい」 土着に最たるもんで、リンゴ追分にも近い感じもあるし 詠:博士の異常な愛情のWe will meet again 泣けてくる あのエンディングのあのシーンであれが流れた事を 想定してみたまえ ベトナム戦争映画のエンディングで What a wonderful world 石:今うちでライヴ終わりに流してるのが 坂本スミ子の「夢で会いましょう」 いろんな世代の人、中村八大とか知らない人でも みんな反応しますよ、必ず 詠:問題はそれに付随する条件ではなくてその物なんだよ それを疎外する、邪魔する行動があるんだよ アノっていう言葉なんだよ それを間に入れるからダイレクトにそれと取引できない 付帯条件は一切いらない 詠:ほんとに一回廃墟になった時に「ひるのいこい」を流して どんな反応をするか見てみたいよ だってそんな時にはこれは誰が作っただとか考える余裕がない 平:歌詞はあるんですか 詠:さだまさしの北の国からじゃなきけど 詠:歌詞がないから良いんだよ あすこにgod bless Japan Buddha bless Japan でもいいけどさ そういうのが入ったらそこで終わりなんだよ それを言っちゃおしまいよ、の 曰く言い難しの文化なんじゃないのかな 内:震災とか空襲とか恐慌とか 真っ平らになった時に出てくるナチュラルな物 さっきの建物の話と同じ 詠:同じだと思う 内:廃墟で最初に聴こえてくる音楽が 日本人のセンチメンタルに一番ぴったりくる 2年後の年末に振り返ることになります。 最後に… 日ハム 北海道 三橋美智也 布谷文夫 細川たかし 東北人 関西人 2本の映画も最初は普通に観ていた 夜毎の夢は? 詠:大笑いなのは川本さんとの2回の対談の間に思いついた なんで新富橋を2回も撮ったのか 一番マイナーな橋に何か個人的にあるのか あすこ関東大震災あとの掘削なんですね 三吉橋から八丁堀にかけての2つの橋だけ 入船橋から八丁堀にかけては川だった。今の新大橋通り その入船川を埋め立てた代わりに水を築地川に入れる必要があったんで あすこが出来た 入船川に4つ橋が架かってた 新富町がぜんぶ遊郭だった 明石町が外人居留地で外人用の色街だった だけど外人が行かなくて4年で廃れた 遊郭の大門があるんですよ、 入船川に4つ橋があって大門の橋が新富橋だったのよ トン! テーブルに見えない地図を描いて話してます。 デジカメのシャッター音が聞こえるので ![]() ![]() 色街が無くなって新吉原に行って寂れようとした時に 森田座が移ってきて名前を新富座に変えて 歌舞伎の町として発展する 新富座の隣に松竹の本社が建てられるわけ そこの通り道として 新富橋から新富町を経て木挽町に行くというのが ルートなの ここに京橋小学校がある、トン!ここに工手学校がある、トン! ここに行くには新富橋を通ってこう行く 12歳の時、学校さぼって図書館に行くのに 新富橋を渡った時に色街の芸妓の見習いの女の子が 振りかなんかして ここの新富橋で12歳の時に会った時の 淡い想い出みたいなものが彼の中にある からこそ新富橋を2度使ったっていうことなんだよ 川本さんに 「こっちがオリジナルの新富橋なんですよ」 って言ったら 「ほうほう、そこで女の子に会ったわけね」 って俺に言ってきたのよ ああそういう事か! 僕はそこまで気がつかなかった そしたら京橋小学校の図書館と月島小学校の図書館と 当時2つしか図書館がないわけ 明石橋から船で月島の図書館に行ったり 新富橋わたって京橋図書館行ったり ここを通いまくってたっていうので 夜毎の夢はこっちの月島が舞台だから そう思って成瀬が歩いたに違いないっていう道筋を考えて 夜毎の夢を見たらびったりハマった 先に道筋を想定して映画を観た 映画から分かったんじゃなくて ![]() ![]() 新富橋の宝来園茶舗 月島のわたし公園 工手学校は聖路加の反対側の所、木村屋のパンの工場の隣 学校の勉強よりも京橋図書館と月島の図書館に通っていたという 通ってた半年後ぐらいに 月島の先が海水浴場になったのよ で写真見たら、水着の女性が みんなさ、水着の女性が12歳で見られたんだよ 大正12年に、そんな場所ほかないよ、言っとくけど だからまさに「秋立ちぬ」の秀男の歳なんだよ ああそういう事だったのか その時にようやく晴海の埋め立てが完成する 大正12年 まだ黎明橋が出来るか出来ないかの頃 おそらく月島の外れの所も土管やヒューム管があって 野球場になってる それが後の「家族ゲーム」の 「家族ゲーム」のあの、勝鬨6丁目アパートっていうのは 成瀬巳喜男が夜毎の夢で野球してた場所だった 内:なんと! 森田芳光は? 詠:分かってない だから、どんな映画監督も東京でロケする場合は 成瀬の無意識に必ず引きずられる っていう事なんだよ 影響とかってそこにあると考えてる これがこれの影響なんて事を 言下に語れるような物は影響なんて範疇の物ではないのだよ 内:良いこと聞いた 平:たしかにそうです 同じシーンでもカットごとにアングルを変えている それがなんだか甘みになる 詠:四方のカットに必ず意図がある なぜそこの場所で四方にしたのか それまで分かったのだよ。分かってしまったのだよ 大瀧さんの話術で以前から気がついていた事 単語が主語、述語、形容詞、接続詞が順不同に出て来る だからどんな映画監督も東京でロケする場合は 成瀬の無意識に必ず引きずられる のセンテンスは どんな映画監督も 成瀬の 無意識に 必ず 引きずられる どんな映画監督も 無意識に 成瀬 に 必ず引きずられる の間違いじゃないか いや、「成瀬の無意識」が主語なのか あるいは両方か 新春放談でも普動説をCGで3次元で表現したいのクダリ(84) 私の天竺のテーマのクダリ(98) そのまま文字起こしすると難解です。 これ、成瀬の細かいカットを構成する点に似てませんか。 同じカットの反復なのか 違うカットの並列なのか ママはうろうろも誤読を曲解を容認する手法です。 まあ無意識にでしょうね。 平:小津の正対に対して斜め45度 詠:やっぱり同じ松竹の出で、小津がメインで 同じ蒲田にいてそこを出て東宝に行くわけで 常に考えてたんじゃないですか 小津さんならこう撮るとかね 小津と五所の中間を行くって自分で言ってますから 小津さんのカメラマン厚田さんの 助手の川又昂さんにこのまえ会ったんだ 長屋紳士録はやっぱりロケだって 寝小便した布団干したり、坂本武が働いてる あれは焼け跡 今そこのビクターの駐車場の隣の備前橋の横 内:この辺ですか 詠:まるで 聖路加と本願寺も入れると目の前の暁橋と備前橋が必ず 平:東京人で川本さんと高架の上から覗いているのは 詠:新金橋、八丁堀を埋め立てた護岸のカーブが残ってるんです 桜川の入り口が残ってる 平:おじさんが最後に渡る橋は 詠:あれは新桜橋、まっすぐ行って楓川の3本目の左が高島屋 高島屋へ象を見に行った帰りだっていう事を見つけた時は 僕は自分で打ち震えましたね 象がいたらしいんだよね 出て来る橋の理由が意味が全部あるというんで驚いた 「象でも見に行ったんじゃない」って言ってる んだけど、高島屋の直線距離の橋を出す事によって やってるなんて、そこまで分かれって言っても 分かったんだけどさ その現場に行って当時の風景とか空撮図をイメージする イメージしてその場所いくとその通りなるんです、不思議に そういうオーソリティーはいっぱいいますよ 蛇の道は蛇で、とてもとても 平:傘の寓意は大瀧さんですか、和傘から洋傘へ 詠:ああいう種類の物はね 細かい話をすると三日三晩は楽に語れます 川本さんと初めて会った時も2人で盛り上がって あのあと、夜の築地歩きましたよ 今度あそこ行ってみようとか あのシーンはここ! 秋立ちぬの助監督の石田勝心さんと一緒に2時間かけて ロケ地を周ったりしました もうご高齢でほとんど憶えておられなかった 映画では町山智浩の記憶のありようが 平:このまえ彼に「次は誰とどういう企画を?」と聞いたら 川本さんとやってみたい、彼の映画の先生だと 大瀧さんが川本さんとこんな事やってるよって言ったら 「よっぽど時間があるんですね」 詠:お前が言うのか町山 平:あれをやってたら忙しいですよね “働いてはないけど遊んでない” 詠:元祖ニートだとか、引きこもりだとか言われるからさ 平:隠居というよりは陸沈 詠:初めて聞いた。まあ分母だね、言わば 内:オファーを全部断って行くのがどれぐらい大変か 平:かなり意識的に自分の環境を作って来られた 40年教育した 詠:とっくに我々の時代は終わってるんだよ なんでみんないつまでも同じ事が続くと思うのか 何かを基準にして生きたら寂しいよ 比較は不幸の始まりだからね 石:今日は大瀧格言が 内:いっぱい出ましたね 詠:ビートルズの日本盤とUS盤と音色が違うと分かったら 不幸だよ しかも4枚買って音質がバラバラだとか もうー不幸 平:パチモンだってミュージシャンなんだ 曲が良けりゃいいじゃん 詠:批評したり分析したらダメ、それが不幸の始まり もはや音楽好きとは言えない 語っちゃダメなんだよ 築地川のお題と、国破れて山河ありとひるのいこい、 アノ大瀧詠一のアノ問題。 もう一度聞きましょう。 問題はそれに付随する条件ではなくてその物なんだよ それを疎外する、邪魔する行動があるんだよ アノっていう言葉なんだよ それを間に入れるからダイレクトにそれと取引できない 付帯条件は一切いらないんだよ 「秋立ちぬ」ロケ地探訪2014-2019総集編 ウララカ−インマイルーム ![]() |